彼はご飯を食べ終わり、「ごちそうさま」と呟く。こう言ってくれたのも彼が初めて。食事のリクエストをしてくるのも初めて。明らかに、彼は他と違う。

私はお皿を重ねてトレーに手をかける。
その時、肩に重みが加わった。

「え……?」

紛れもない、火神くんの頭だ。
彼の頭が私の肩にのし掛かっている。ちくちくの髪が首に触れて、少しだけくすぐったい。

「ど、どうした、の……!?」

あからさまにキョドる自分が憎い。
いや、それ抜きにしても、なんなんだこの状況は。

「なぁ……」
「なな、なな、ななななにか、な……」
「引くなよ?」

それは冗談ではないことは声音で分かって、私の心臓はゆっくりと正常に戻っていった。
これから彼は、真剣に話すのだから、キョドってなんていられない。

「ひか、ないよ…」

私が頷けば、彼が息を吸うのが聞こえた。

「お前、さ。他のやつも監禁したことあるって言ったじゃねーか」
「うん……言った」
「なんか、よくわかんねーけど、モヤモヤしたんだよ」
「え……?」
「わかんねー。本当にわかんねーけど。だって、お前は俺を閉じ込めるやつだから」
「うん……」
「だけど、さ。お前が、他のやつにも自分を蔑ろにしながら尽くしていたと思ったら…………なんか……」

がばりと彼は顔を上げる。
その表情に、私は言葉も、息をするのも、考えてたことも、全てを忘れた。

悔しいような、怒っているような、泣いてるような。
辛そうな、そんな、顔。

複雑すぎて、視界に入れるのもためらうような、顔。

「なんか、悔しかったんだよ…っ」

ズキリと心臓が痛む。

こんな顔をさせたかったんじゃない。
色んな顔を見たいけれど、こんな顔は見たくない。

私は、なんてことをしてしまったのだろう。
彼を苦しませていたんだ。
護るなんて言ったのに。
苦しませていたんだ。

「ごめ、なさい……」

そんな陳腐なことしか言えなくて、私は部屋を飛び出した。

汚くて汚くて、嫌になる。