「え、君、原と仲がいいんだろう?ごめん、ああいうタイプとつるんでる子とか苦手で…」



「ちくっっっしょう!!!!」

一世一代の告白をまさかそんな風に断られると思っていなかった私は、自分の机を両の拳で叩く。目の前では原因である原がゲラゲラと笑っていた。他人の不幸は蜜の味ってか?滅べ。

「つーか原とつるむって何!?つるんでねぇし!!」
「えー、つめてぇこと言うじゃん。つるもーぜ」
「なんで私があんたの素行が原因で振られなくちゃいけないわけ!?」
「流石にそれは俺も知らねぇよ」

全くちっとも納得がいかない。というか、これはつるんでるんじゃなくて一方的に「絡まれている」に近い。そこを勘違いしないでほしい。マネージャーでも女バスでもなんでもない私が気付いたらこんな奴らに絡まれている意味がわからない。たまたま原と同じクラスで席が前後だっただけじゃないか。

「つーか好きな男とかいたんだ。いっちょまえに」
「おい、一言余計だろ」
「え?どこ?“つーか”?」
「接続詞は別にどうだっていいよ!よく考えなくても“いっちょまえに”でしょうが!!」

必死に突っ込む私に彼は心底おかしいといった様子でケラケラと笑う。あー、こうやっていっつも話してるからつるんでいるとか言われるのか。心外だ。

「まあ……私が一方的に好きだっただけどね」
「は、?なに?さして仲がいいわけでもないくせに告白したわけ?」
「だって…言わなきゃ始まんないかなって…。まあ、始まるどころか一瞬で終わったけど」
「はーーーーーー、想像以上に頭の使い方を知らねえみたいでマジで呆れた」
「別に今さらなに言われたって刺さらないけど、せめて一言で“バカ”と言ってくれよ」

原はポケットからガムを取り出すと一枚口に含む。あ、どこに売ってるか謎なよく膨らむフーセンガム。今日は珍しく噛んでないなと思ったのだが結局食べるのか。

「あのさ、そういうのは徐々に徐々に外堀から埋めてさ、相手が「もしかして俺のこと好きかもしれない」って勘違いする程度にスキンシップを取って、相手にとって過ごしやすい相手になってから適度に嫉妬させて落とすのが基本だろ?」
「………、そこまで考えて恋ができなくてごめんなさいね」
「え?本能に従うしかない野獣でごめんなさい?」
「悪意120パーセントの脚色やめて!!」

原はまた可笑しそうにケラケラ笑う。性格を通り越して性根が腐っているためどうにもできないのが歯がゆい。というか、こいつに恋愛の極意的なものを伝授されるとは思ってもいなかった。

「原もさ、好きな子いるの?」
「おれ〜?んー、どうだと思う?」
「いや、知らないし、ごめんそこまで興味ないから深追いもしないけど」
「聞いておいてとんでもねえ放置プレイするじゃん」

そんな話をしているうちに中休み終了のチャイムが鳴り響いた。最悪だ。結局原と話して休み時間が終わってしまった。私は慌てて次の授業の教科書を取り出す。

「心配しなくても名前はモテるし大丈夫でしょ」
「は…?」

次々に生徒が席についていく中、原がなんの気なしに言った言葉に一瞬思考が止まる。どういうつもりで、どういう意味を込めて言ったかは知らないけれど……

「え、バカにしてる?」
「筋金入りー!」

原がそんなことを言うなんて悪意以外の何物でもないだろう。残念ながら「え?私がモテる…?もしかして原クン……」みたいな展開には多分地球が逆に回ってもない。バカにしているつもりなら授業中にその背中に0.3mmのシャーペンをぶっ刺すけど。

「あーああーあ、いや気付いてるっしょ流石に」
「え?私があんたの背中にシャーペンで北斗七星を刻もうとしていることに?」
「気づかせてくれてありがとう。背後には気をつけるわ」
「感謝が言える子になったのね。忘れないうちにそのデコにでも感謝って刻んであげる」
「サイコパスかよまじでやめろ」

ペン先をカチカチと出しながら彼の頭を掴んだ瞬間に教室のドアが開いて先生が入ってきた。私は舌打ちをこぼしながら彼から手を離し、シャーペンをしまう。原は小さく笑いながら「悪い虫ばっっっかりにたかられて大変だなぁ〜ラフレシアは」なんて言ってきたので、やっぱり遠慮なくシャーペンを突き刺した。