微睡む意識の中でまぶたを持ち上げる。ここはどこだろうと辺りを見渡し呆然としてしまった。
「な、にこれ……?」
そこは大きな体育館だった。横にも縦にもとにかく広い。聴き慣れたスキール音とドリブル音が響き渡る。体育館の中には幸男くんと真太郎くんと大我くんと青峰くんがいる。
それも、大きいのと小さいのが一人ずつ。
「夢だ!!」
一瞬で理解した。この意味の分からなさは夢だと。うんうん夢ならしょうがない楽もう、と気分を切り替えて幸男くんに近付く。
「幸男くん」
「ん?」
「ん?」
二人の幸男くんに声をかけると同じ返事をしながらこちらを振り向いた。小さい幸男くんは眉を上げて少し不思議そうな顔が可愛らしいが、大きい幸男くんは凛々しさすら感じる。
「幸男くん何してるの?」
「ああ、ギター教えてんだよ」
よく見ると二人の手の中には同じギターが存在した。大きい幸男くんはそれをまるで手指のように華麗に演奏する。小さい幸男くんはそれを必死に真似ているようで、とても愛らしい。思わずその頬を突くと「ななななにすんだよっ!しばくぞ!!」と顔を真っ赤にしてしまった。やっぱりかわいい。
「…………」
ごめんねーと小さい幸男くんの頭を撫でると、むすっとした表情の大きい幸男くんに頬を突かれる。「何?」と聞けば「お返し」と言われた。あれ……大きい幸男くんもかわいいな……。
次に近くに居たのは真太郎くんだった。何やら小さい真太郎くんと大きい真太郎くんが喧嘩をしている。「どうしたの?」と間に入ると、お互いが「こいつが!!」と指差すものだから、とりあえずなだめる。
「どうしたのさー二人とも、喧嘩しないで」
「喧嘩ではないのだよ。この小さいのがふざけたことを言うから……」
「それはこちらのセリフなのだよ。大きいからって調子に乗るなよ」
何故自分自身なのに喧嘩をしてしまうんだ……とため息が溢れる。とりあえず理由を聞くと、大きい真太郎くんは恥ずかしそうに視線を逸らしてしまった。逆に小さいしんくんは私の手をぎゅっと握ってくる。
「意気地なしは引っ込んでいろ。なまえは俺の運命なのだよ」
「その手を離せ。例え小さい自分だとしてもそれは許せん」
「えーと?」
また喧嘩が始まりそうなので、「喧嘩やめてー!」と二人の頭を交互に撫でる(大きい方はうんと背伸びした)。すると二人とも俯いて固まって黙ってくれるから、どうやら落ち着いてくれたらしく腕を組んでうんうんと頷いてしまう。仲良きことは美しきかな。
次に気になったのは大我くんだった。大きいのも小さいのも大量のハンバーガーを食べている。まるでフードファイターだ。
「大我くんはよく食べるねー」
と声をかけると、二人とも太陽のような笑みを見せてくれた。いつもの二倍眩しい。
「ほら、なまえにもやるよ」
大きい大我くんがそう言って一つハンバーガーを分けてくれる。なんだかお腹が空いた気がしたのでありがたく受け取りかぶりつく。夢の中なのにとってもおいしい。
「あ、ついてるよ」
小さい大我くんの頬にソースが付いていたのでそれを人差し指で拭い口に含む。甘辛いソースは絶品だ。小さい大我くんはニカっと笑って、「サンキューな!」と言ってくれた。多分天使か何かなんだと思う。
「いや、お前もついてるぞ」
「え!?」
「ついてるよ」なんて少年漫画のヒーローのノリで言ってみたのに、情けない。どこどこ?と大きい大我くんに聞くと、彼はこちらに手を伸ばして親指で口元を拭ってくれた。
「ん」
「えっ」
そしてそれを自然な流れで口に含まれて頬に熱が上った。「なんで舐めるの!?」と慌てて問うと、「いやお前もやっただろ?」と至極当たり前に言われて言い返す言葉が見つからなかった。
最後は青峰くんだが……。さっきから聞こえているスキール音にドリブル音は彼のものだった。大きい青峰くんと小さい青峰くんの1on1。二人ともとても楽しそうにプレイしていた。それがあまりにも綺麗だから思わず見惚れてしまう。呆然とそれを見ていると、大きい青峰くんがダンクを決めた時に決着がついたようだ。
「負けたー!もう一回!」
「あー?何度やっても変わんねえよ」
「わかんねえだろ!?俺だったら俺に勝てるかもしれねえ!」
「はっ。それはそうだな。いいぜ」
彼らは全く私の存在に気付いてないようで、夢中でバスケをしている。大きい青峰くんの口角が上がっているのがなんだか嬉しくてたまらない。ポイントでもつけようかなぁと両手を広げると、ガンッと頭が揺れた。
どうやらボールが頭に当たったらしい。
そんなことを客観的に考えながら徐々に意識が浮上してきた。
ハッと目を覚ますと、そこはいつもの天井だった。
「はーー……びっくりした」
心臓がバクバクと鳴っている。青峰くんがスティールしたボールが当たったら首の骨折れそうだ。そんなことを考えながら私はベッドから体を持ち上げた。
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