同じクラスではあったが、席が近いわけでもなければ
部活や委員会で関わりがあるわけでもない俺と望月が
初めて言葉を交わしたのは、高校に入学して暫くが過ぎた
5月17日の事。
朝練を終えて登校した俺に祝いの言葉を告げる奴らに
軽く礼を言いながら、自分の席へ向かう途中で
「倉持くん誕生日なんだ、おめでとう」
そう声をかけてきたのが望月だった。

「おー、サンキュ」

その時はそんな言葉しか返すことが出来なかったが、
後日『ゲーム』という共通の話題を見つけた俺たちは
それまでの関係とは打って変わって
毎日のように馬鹿な雑談を繰り返すようになり
呼び方が『倉持くん』から『倉持』へと変わるのも早かった。

馬鹿話の中で知ったのは、兄貴が2人いる事。
それから、そこそこ野球の知識もある事。
兄貴が2人とも小学生の頃から野球をしていたらしく
休日に家族で出かけると言えば
野球観戦かバッセンがほとんどだったと言っていた。
ルールや用語の説明なしにテンポ良く話せるのは
気分が良かったし、時折返ってくる
小気味好いリアクションに俺は自然と饒舌になっていた。
野球もゲームも兄貴の影響かと納得しかけたが、
ゲームは望月自身の趣味らしい。

そして兄貴たちの影響か元来の性格か知らないが、
望月は割と軽いノリで雑な扱いを受けても
反撃するか笑って流してしまう事が多い。
少々語気が強くなった所で気にも留めない姿勢は
俺の性分上、非常に付き合いやすかった。

学年が上がりクラスが離れると、
途端に話す機会は減り、廊下で鉢合わせても
向こうは向こうで女友達を連れていて
二言三言交わして終わる事が多く
なんとなく物足りなく感じている自分がいた。

そしてまた1つ学年が上がった日、
隣で「うわ、俺と倉持また同じクラスじゃん」と騒ぐ御幸にも
先日の甲子園の話を持ちかけてくる周りの奴らにも
“いつも通り”を装って言葉を返しながらも
俺の意識は、新しいクラスが書かれた紙の中に
望月の名前を探す事でいっぱいだった。





「本当にこんなんで良いの?」

「だから良いっつってんだろ、しつけーな」

「だって誕生日プレゼントが昼ごはん奢るだけって…」

「良いんだよ別に。お前に話あって連れ出しただけだし」

「……話?」

「おー。……ま、とりあえずお前も食えよ」

納得はしていない様だったが、
大人しく黙って飯を食い始めた望月を盗み見ながら
これからの事を考えてみた。

「なあ、望月……」



俺が 好きだ っつったらどんな顔すんだろうな。

答え合わせまで、あと30秒。


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