私の手の届かないどこか遠く
暁はそこへ行ってしまうんだと気付いていた。
だから別に、捨てられるだとか裏切られただとか
そんな風に恨むような気持はない、本当に。
だけど思っていたよりも早い別れが寂しいのも本当。
絶対に言わないけれど。
「明日だよね、出発。気を付けて」
「……見送りには来てくれないの?」
「うん。今日でおしまい」
「そっか」
分かりやすく落ち込んだ姿が
別れを目前にした今でも私を好いていると
言葉よりも雄弁に伝えてくれる。
「応援してる。暁が新聞に載るの楽しみにしてる」
「うん」
「ずっと見てるから。頑張れ」
「うん」
言いたいことは沢山あるのに
肝心なことは何も言えないまま
時間だけは無常に過ぎていく。
「暁、先に帰って」
「え……」
「もう、ここでお別れにしよう」
「もう暗いし、送ってく」
「1人で大丈夫」
「だめ」
「お願い。最後の我儘だから。見送らせて」
私たちが付き合い始めたこの場所は
私たちの別れと、それからきっと、
暁の門出に相応しい場所なんだと思いたい。
痛い程に私を抱きしめた暁の背中に、手は回さなかった。
ごめん、と聞こえた気がした直後
最後に唇を重ねて、暁はいなくなった。
私の頬は暁の涙で少し濡れていて、
まるで私が泣いているみたいだ。
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