反転率90%

理鶯のキャンプ地にゲリラが襲う。たまたまレアナも遊びに来ており、違法マイクを食らってしまう。異変を察知し狩りから戻った理鶯が、レアナを背に庇いながら即鎮圧。
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座り込んでいる彼女の顔色を窺おうと屈むと、突然レアナに両肩を押されて後方に倒れかける。
瞬時に後ろ手をついて上体を支えるが、その腹部に彼女が乗ってくる。
「レアナ?どうした」
「……。」
逆光で表情が見えない彼女は黙ったまま理鶯へと顔を寄せ、その首元に齧りついた。
「…っ!」
僅かに漏れた彼の苦悶の声に、レアナの噛む力も強くなる。容赦なくたてられる歯に理鶯は眉を寄せつつ彼女の名前を呼んだ。
それにビクリと反応して、彼女はゆっくり口を離す。つぅ…と唾液が尾を引いてプツリと途切れた。
「りおう…」
漸く見れたレアナの表情は―
「わたし、あなたをころしたい。どうしても」
彼女から1滴、1滴と落ちてくる涙を拭うこともできずに、理鶯はただ見惚れていた。そこには狂気など寸分も存在せず、ただ静かに美しさだけを纏っていた。緩やかに八の字になった眉に、光を反射して輝く涙。困ったように微かに上がった口角。今までにないほどレアナが神聖な何かに見える。まるで死の訪れと共に現れる御使いのようで。自分はここで死ぬのが当然かと思う程で。自分の中の何かが一瞬揺れ動いた気がした。
「…小官を殺して、貴女はどうする?」
彼女は暫く理鶯を見つめていた。やがてその止まない涙を湛えた目を細めた。
「わたしも死ぬわ」
これでもかという程に集めた優しい愛を詰めた甘い声が静かな夜の森に浮かんだ。
「ならば、死ぬわけにはいかない」
概ね予想通りの回答を得た。
ジクジクと痛む喉を擦る彼女の手を取って体を起こす。
「貴女を守ると誓ったからな」
その指先に唇を落とす。
繋がった手に力がこもる。理鶯の指が締め付けられる。まるで首を締められているようだ。自分の手では理鶯の首を締められない。それを分かっているのだろう。その拙い代償行為に心臓を掴まれた気分になった。
―これだけで、十分貴女は小官を殺せる。
「理鶯…わたし…」
硝子の瞳に徐々に光が灯る。
随分人らしく戻った彼女の涙をようやく拭ってやることができた。
「大丈夫だ。恐ろしいことは何もない。小官が傍にいる」
優しい声色で彼女を諭す。その暖かさでレアナはくたりと理鶯に体を預ける形で意識を失った。力の抜けた彼女の体を抱きながら、理鶯はその額にキスを贈る。

彼女の頭部を撫でながら、先程痛烈なまでに感じた神聖で美しい死の予感を思い起こした。この柔らかくて暖かい体温に引きずり込まれそうになる。その優しさに歩みを向けたくなる。
しかし、その度に頭を過ぎる数多の屍、鼻腔を刺す錆びた鉄の臭い、それらが理鶯を引き止める。足首を掴んで「忘れるのか」と憎々しく責めたてる。
罠にかかって絶命の叫びをあげる動物の鳴き声。苦しみ悶えうつ鳥の羽ばたき。
頭のない誰かも分からない死体、咽び泣きながら息を引き取る仲間。それを看取る友人、家族、恋人…。
「死」が、そんなに美しいわけがない。
そんなに綺麗なわけがない。
でなければ、今まで犠牲になってきた命はなんだったのだ。これまで見てきたものはなんだったのだ。重い撃鉄を打ち下ろし、軽い引き金を引いてきたこの手に残る感触は。
利き手を持ち上げると、サラリとレアナの髪の毛がこぼれ落ちていった。その柔らかさに無意識に口をつく。その声は懇願の響きに揺れながら、夜風に溶け込んでいった。

「そんなに綺麗に殺さないでくれ…」



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