レトルトふやける

「マスター、少しよろしいですか?」

レイシフトや戦闘訓練、魔術の勉強の合間の小休憩。食堂前でルーラーのサーヴァントであるエクスカリバー…もといレアナに呼び止められ、その誘いに俺は素直に頷いた。その応えに彼女は少し笑みを深め、お礼を言った。

エミヤが作ってくれたお菓子を適当につまむ。彼女は湯気のたつ紅茶を一口飲んで、そのカップを静かに置いた。

「お疲れのところ申し訳ありません」

「いや、別にいいんだけどさ。どうかした?」

「…実は、アーラシュ殿にお聞きしました。マスターは、その…」

珍しく歯切れ悪そうに何かを言おうとするレアナ。要領を得ないそれに、首を傾げる。そんな俺の様子をチラチラと見ながら、彼女は意を決したように両手を膝において前のめりになった。

「マスターは、我が王にお会いしたと!!それは本当ですか!?」

「ぅん、…ん?」

我が王…我が王…?我が王ってどのアーサーのことだ??よく分からないが勢いに押されてyesの意を返してしまった。
それに彼女は目を輝かせる。こんなに感情を表に出すレアナは初めて見た。いつもは騎士然とした凛々しい顔が、今や少女のように花開いている。か、可愛い…。
あまりにポカンとしていたのか、レアナは自分の勢いに気付いたのか直ぐに身を引いて咳払いをした。

「し、失礼しました…。つい…」

「大丈夫だけど…えっと、我が王ってその〜」

「あ、こちらの世界のアーサー王のことではなく。確かにこちらの王も我が王には変わりないのですが」

この辺りの説明はまたいずれ。そう弾んだ声で言うその調子に、やっぱり可愛いなって思う。何だか恋する少女みたいな感じで。
アーサー王のこととなるとこんなに人が変わるとは。真名からしてアーサー王と縁のある存在であることは承知していたが、実際に彼女の口からアーサー王の話をしっかりと聞くのはこれが初めてだ。それほど、彼女はあまりこの手の話をしてこなかった。
数多の英霊と過ごしてきて、人によって自分の過去をどう感じているのかは違うことを知っていた。彼女の場合、過去のことをあまり良く思っていない部類ではないか。そう思い突っ込んで聞くこともしなかった。
それにしても、彼女のいう『こちらの世界ではない』アーサー王というのは、つまり、あのレイシフト先で出会った―

「…男の方の、アーサー王ってことだよね?」

「はい!」

ま、眩しい…!!思わず目をつぶりそうになった。なんて眩しい笑顔なんだ。

「やはりお会いしたことがあるのですね。その時のお話をぜひ…!」

そんな輝かしい顔で早口に迫ってくるレアナに、ついに両手を取られ進退窮まった。手に持っていたクッキーが落ちかけた。

「は、話す…!話すからとりあえず落ち着いて〜!!」

「ハ!!これはすいません…!私としたことが!!」

その日は本当によく喋った。いや、喋らされた。レアナのキラキラした瞳で見つめられると、ついつい話さずにはいられなかった。
あの日、第七特異点の地にて助けてもらったこと、その後別の土地でも出会ったこと。数奇な運命の巡り合わせによってあの王様に出会った。
彼女と出会えたのも、その縁のおかげかもしれないとふと思った。
レアナは異世界のアーサー王のエクスカリバーであったらしい。こちらのアーサー王、アルトリア・ペンドラゴンとは面識がないらしい。
彼女のためにも、いつかアーサーを召喚出来たらいいなぁと心の隅で願いながらお茶をすすった。



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