>休みの日。特に、遊ぶ予定が入ってる日なんか、オレはちゃんと目が覚める。目覚ましよりも早く、だ。今朝も勿論、そうだった。
今日はゾロと、ナミと、ウソップとサンジで映画を見て飯食ってゲーセン行って。つまり、いつも通り遊ぶ約束があった。昨日の朝まで、オレはそれがスッゲェ楽しみで仕方がなかった、のに。
どうしてだか、昨日の夕方にはそうでもなくなってた。いやでも、どうしてだかってのは可笑しい。理由は分かってる。青が今日、サボと遊ぶって聞いてからだ。
オレはそれが、非常に面白くない。
(今まで、外で遊ぶってのオレとだってあんまりだったじゃんか)
そのくせ、最近メールをはじめた(この前の博物館の時、メルアド交換してた)サボと、遊ぶってそりゃあ、面白くないに決まってる。
なんだそれ、っていう青に対してイラついてんのが自分でも分かるくらいだ。あと、サボにもちょっとだけ。
「なんだよルフィ、機嫌悪いのか?」
ムスッと朝飯を食ってたら、エースが眠たそうな目でそう聞いてきた。
こんな態度で飯を食べてたら、いつも絶対に怒ってくんのに、今日は寧ろ不思議そうにしてる。たぶん、今日が休みだから機嫌がいいのかもしんねぇ。その辺のことは、どうせ考えたってわかんねぇんだけど。
「別に…」
エースに、サボと青のことを聞くのはなんか違う気がする。
「別にって…。お前今日、遊びに行くんだろ?何か嫌なことでもあったのか?」
「…青が」
「青?」
「やっぱなんでもねぇ」
目玉焼きを口に押し込んで、エースには結局何も言わないようにした。
ふぅん、と言いながら、エースが本当にどうでも良さそうなのが、ちょっと「しゃく」ってやつだった。あいつは、青はいっつもエースばっかなのに、エースはいっつもあいつ以外ばっかりだ。
「青、今日サボとデートなんだってよ」
そんなことを考えてたら、いつの間にか口を塞いでいた目玉焼きは胃の中に落っこちちまってて。空いた口は、勝手にそんなことを言ってた。
オレのこんな気持ちなんて知りもしないで、エースは驚いたように目を丸くする。それから、とんでもなく普通に驚いただけだった。
「へぇ?そりゃあ、珍しいこともあるんだな」
ああ、ほらな。やっぱり言うんじゃなかった。
エースが、青のことを詳しく知りたがらないのは分かってた。それから、オレがその事でイライラしちまうって事も。
でも、こういうことだって分かってる。もしも、エースが青のことを知りたがったら、それもやっぱり嫌だ。だってよ、いつもは「ちっとも」なクセに。そーゆーのって調子いいって言うだろ?
エースは、目玉焼きをフォークで持ち上げて、それを口に入れながら言った。
「はぁーん。じゃあお前、面白くねぇんだな」
元々大きくねぇ目を、もっと細くて。エースはニヤニヤとオレを見た。
「なんだよ、エース。意味わかんねぇ」
確かに面白くは、ねぇんだけど。でも、ニヤニヤとからかわれるワケが分からなかった。
そんなオレに、今度はエースの呆れたような顔が返事をした。
「お前なぁ……。じゃあ、言ってやるけど」
エースは頬杖をついて、ビシリ、とフォークでこっちを指す。
フォークの先には当然、オレしかいない。
「お前、青がとられちまうって思ってんじゃねーか?」
カッ、とその言葉で頭に血が昇った。つまり、エースの言う通りだったし、それを言い当てられたのが恥ずかしかった。
いや。恥ずかしい、とはちょっと違うのかもしんねぇけど、オレにはこんな風に血が上る気持ちを、「恥ずかしい」しか知らない。
「ルフィ、お前はいっちょ前に嫉妬してんだよ。そのくせ、ザボにも青にも何も言えないから、腹が立ってんだ」
「わー!!いい!もう、なんも言うなっ!!!!」
絶対にエースのニヤニヤした顔なんか見ないように、オレはひたすら朝食をかき込んだ。どうせ、目があったとたん、嫌な感じにからかうに決まってる。
「ま、いい機会だよ」
笑った声が、急に静かになった。その声に思わず、オレは顔を上げた。
「そろそろ、姉ばなれだな」
エースが珍しい顔をして、そう続けた。口だけで笑ってるような、静かに本でも読んでるような、そんな顔だった。
「姉って……青のことか?」
オレはとにかく何か言わなきゃ、と。それだけ何とか言っておいた。
「他に誰がいるんだよ」
エースはまた呆れて、そう言った。それでも。
「青が姉ちゃんだって、そんな風に考えたことねぇもん。友達だ」
エースは何か言おうとして少し口を開いて、でも何も言わなかった。代わりにその開いた口で、オレンジジュースを飲む。
きっと、オレには「何か言おうとした」ことがバレてねぇとか思ってるだろうけど、いくらなんでもそれくらい、兄弟なんだからちゃんと分かる。
「ま、サボの言うデートなんて、つまりただのお出かけだろ」
オレンジを飲みきったエースはそう言ったけど、ホントにそれを言いたかったのかは分からなかった。
***go to b.