22:00の隣人
お仕事疲れ果てて帰ってきて夜風に当たりながらぼけーっとベランダの柵に身を預けてあたしは缶ビールを口に流し込む。隣人の窓もカラカラと音を立てた。ふぅと息を吐き出す音が聴こえてくる。隣ってどんな人が住んでるんだろう?という好奇心から乗り出して見てしまったあたしはばっちり隣人さんと目が合ってしまった。
『こ、こんばんわ~』
と声を掛けると視線だけをこちらに向け「ども。」と一言。そしてまたふぅーと煙を吐き出す。あまり良く思わない煙草だがこんなに色っぽい吸い方をする人もいるんだって見すぎていたみたいでふっと笑う声と穏やかな表情をこちらに向けて
「見すぎですよ」と言う隣人。
あたしは慌ててぱっと視線を首ごと逸らし赤くなる顔を誤魔化すように手に持っていたビールを流し込み、勢い良すぎて少しむせる。くつくつと笑っているのが隣から聞こえてくるので少し睨んで見る。
「こんな人が隣に住んでたとはな」
『悪かったですね、あたしみたいな隣人で』
皮肉たっぷりに言ったつもりだったが隣人さんは聞いていなかったようだ。まだくつくつ笑っている。失礼な人だなと思ったあたしは残りを飲み干し頬を膨らませた。
「あまり怒っていると酔いがまわりますよ」
『だれのせいだと思ってるんですか!』
「今夜も冷えるんであんたも早めに部屋戻った方がいいですよ。癒されました。おやすみなさい。」
いつの間にか煙草は吸い終わっていたのか隣人さんは好き勝手言って部屋に戻って行った。怒ると酔いがまわるなんて聞いた事ないけど!癒されたってなんだ、いったい!!やっぱり失礼な人だ!と1人残されたベランダでぷんすか怒るあたしの顔はまだ火照っていてきっとあの人の言う通り酔いが回ったんだろう。どきどきしている煩い心臓もお酒のせいだ。自分に言い聞かせてあたしも暖かい室内へと戻っていく。