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カリカリ…とシャーペンが紙を滑る音だけが響く。
前に座っている幼馴染は課題を終えたのかゲーム機を手にしていた。

もうこんな姿も見納めかなんて今生の別れみたいなことを思ってしまう。
話さなくては、と思いながらも既に一ヶ月経っていた。

シャーペンを止めて口を開く。

『…研磨』

私が声をかけるといつもは画面から目を離さない幼馴染は私の声に違和感を覚えたのかゲーム機を置いてこちらを見る。

『私、音駒行かない』

私の言葉に目は少しだけ大きく開かれて眉を下げた。

「それは、クロのことがあって」
『ううん。クロは関係ないよ。まぁちょっとはあるかもしれないけど…』

そう苦笑すれば、私の隣に来てこちらを見て座るので私も座り直して向き合う形で座る。
不意に手を握られて少し寂しそうな顔をされてしまえば、自分の選択は間違っていたのかもなんて心が痛くなった。

『おばあちゃんが体調良くないんだって』
「この前の三連休部活休んでたもんね。おばあちゃんの家に行ってたの?」
『うん。本当はもう六月には話が出てたんだけど、配慮してくれて私も行くなら丁度四月から行けるようにって。』

ここ最近体調が不安定になっていた祖母は大丈夫だと笑っていたが、前に見た姿よりだいぶ弱々しく見えた。
嫁姑問題なんてどこの国の話だと言うくらい祖母と母は仲が良くて、今回祖母の家に行こうと言い出したのも母だった。
願書も祖母の家から近い高校へと郵便で出しておいた。

『だから、研磨と一緒に学校行けなくなっちゃうんだ。』
「…ゲームは?」
『ゲームはするよ。オンラインで、通話しながらでもできるでしょ?』

そう笑えば研磨も少し顔が綻ぶ。