ネタ帳

2023 / 11 / 14
kmt

2020年に書かれたネタです。
kmtの無惨様夢。ちっとも明るくない。





 鬼になったのも、人を殺し喰らったのも、日の光を浴びて自害することが出来なかったのも、全部私が望んだことではなかった。
 鬼にされ、意識を取り戻したあの瞬間程の絶望感を味わうことは二度とないだろう。
 人外となり、家族を喰らい、血に塗れた自分。
 それを楽しげに見ているあのお方。
 何が気に食わなかったのか、随分と弄ばれたものだ。
 飢餓状態の私に生きた人を差し出し、喰うように命じる。否定すれば酷い折檻を受ける。それが恐ろしくて謝りながら喰らえば、満足そうに微笑む。
 暫くして閉じ込められていたあの方の居城から逃げ出し、一人での生活を始めた。しかしながらあの方には居場所を特定されていたらしく、すぐに余計なことは考えるなと警告を受けてしまったが。
 もういやだと。地獄に落ちるのも覚悟で日に当たれば、途端に琵琶の音が鳴り、あのお方の元へ移動させられる。
 ずっと監視されていた。怒りに狂ったあのお方は手が付けられない。
 ボロボロな状態にさせられ、何日間か部屋に閉じ込められた。

「二度と馬鹿な真似はしないと誓え」

 髪を引っ張られ、顔を持ち上げられる。赤い瞳に睨みつけられ、私は泣きながらあのお方に綴るしかなかった。
 何度も何度も頷き、用意された人を喰えば膝の上に乗せられ、優しい手つきで頭を撫でられる。
 期限を損ねなければ、私は優しくしてもらえる。痛い思いはしないで済む。
 そう気付いてからは大人しくしていた。
 人を喰らうことは少なく、喰らうにしても山で遭難して既に亡くなった人を喰べた。飢餓状態になるのが恐かったのだ。また、大切な誰かを殺してしまうのではないかと。
 あのお方には何度か血を分け与えられた。私の様な弱い鬼はすぐに日輪刀を持った鬼狩りに殺されてしまうからと。