ネタ帳

2023 / 11 / 14
GS3

柔道部で青春を送る、「Lilac」というタイトルで連載をしたかったお話です。供養。





 はばたき学園。この地域では中々に有名な学園で、受験時の倍率が高い。というのも伝説のモデル葉月珪や天才芸術家の三原色など、持ちうる才能を遺憾なく発揮し、名を轟かせた有名人がこの学園出身だからである。とはいえ中高一貫校。中学受験をしたい!と自ら言い出す子どもは少ないので、親の方針で入学している子が多い。
 そんなはばたき学園に外部受験で無事に合格した私は部活に入らずにバイトをしようと、某バイト募集冊子を教室で読んでいたのだが、ふらりとやって来た二学年上の従兄弟に話しかけられる。

「よお、入部届ってもう配られたか?」
「え、うん」
「貸して」
「どうぞ……?」

 親戚同士が仲が良いとはいえ、年上相手だから何となく強くは出れない。言われるがままに今日配布された入部届のプリントを手渡すと、勝手に筆箱を開けられてペンを抜き取られる。
 見た目からは想像出来ないくらいに美しい文字で、堂々と柔道部と書かれたプリント。加えて押された『不二山』の判子には私もストップをかけた。

「ちょっと待った!」

 ガタン!と椅子から立ち上がり、職員室へ向かおうとしているであろう従兄弟の腕を引っ張るがビクともしない。それどころか従兄弟が進む方向へ私の体も動いてしまうのだから、体幹が良いだけでなく力もある。

「何考えてるの、嵐くん!」
「入部届を提出しに行く」
「そうだけどそうじゃない!」

 ついに教室から廊下へと移動してしまい、入学してひと月も経っていないのに注目の的だ。ひぃひぃ言いながら腕を引っ張っていると、私たちの間に入ってくれる勇者が現れる。

「ちょっ……!何してるんスか、嵐さん!」
「ん?新名か」
「誰かは存じませんが、この人止めるの手伝ってください!」