2025 / 10 / 08
風花雪月ネタ@
一番最初に考えていたトリップ物。大分明るい雰囲気でした。
空が近い。山登りをした時のように不思議と美味しく感じる空気にはすっかりと慣れてしまい、年に数回しかしていなかった"お祈り"は毎日行うような生活を送っていた。
自宅ベッドで寝ていたはずがあれれ〜?おかしいぞ?とばかりに山の中で木に背中を預けて眠っていたらしい私は子宝に恵まれなかった老夫婦に家族として迎え入れられ、今はセイロス教の聖地であるガルグ=マクで暮らしている。
行雲流水と言ってしまうと仏教用語なのでこのフォドラの大地では冷たい目で見られてしまうような気がするが、今の私はまさにそんな状態だった。
考えようとすればいくつでも疑問は浮かんでくる。
魔法なんてファンタジーなものが存在していて──けれどこの大地も太陽は西から昇り、東へ沈んでいく。
ただの馬だけでなく、翼の生えたペガサスが飼われていて──けれどこの大地も日が沈み始めれば金星が見え、北極星だって空に浮かんでいる。
知らない文字が使われていて──なのに言語は同じで日本語が伝わる。
余計なことを考えれば沼に嵌る。だから私は考えない。現実を直視しない。
ただ雲や水が流れるように、成り行きに身を任せる。
セイロス教を信仰しているわけではない。ただ、養父がセイロス教の騎士団の一人であったこともあり、共に教会へ連れられて祈りを捧げているのだ。
初詣や七五三で貰えた千歳飴に心を奪われていた私だが、宗教を信仰するという感覚を今まで持ってはいなかった。生きている間に無意識下で神道を。お仏壇に手を合わせている時や自分が死した後は仏教に。そんなふわふわとした思いでいた私が今更一柱のみを崇めるなど出来るはずもなく。
怖いもの知らずに神様仏様、本日もよろしくお願いいたしますと心の中で唱えているのであった。
その信仰心の低さからか、白魔法と呼ばれるものが使えず、周りからは憐れまれていたりする。まあ、そもそも私が魔法を使えるはずがないのだが。教会通いで良かったことなんて、聖歌を歌わされることによって高音が出るようになったくらいのものである。
現在は私を拾ってくれた老夫婦こと義理の両親とガルグ=マクの城郭内にある街に住んでいるのだが、タダ飯食いはよろしくないと元騎士である義父の伝でガルグ=マク修道院内の書庫で働かせてもらっている。
それに伴いフォドラの文字を教えてもらい、頭文字から貸出されていた書物の片付けを行なっている。すらすらと読めるようになるにはまだまだ時間が掛かりそうだ。
書庫番のトマシュさんは私にとても良くしてくれていて、私の文字の先生はトマシュさんだ。
「せいと、のえつら、ん?あ、閲覧!閲覧を、禁ずる……え、これ私が読んでも大丈夫なやつですか?」
「#名前#さんは生徒ではないでしょう?」
「たしかに!」
大修道院には士官学校が併設されており、トマシュさんが勉強用にと選んでくれた本は貴族名鑑。つまり、一部生徒の実家の情報まで載っているのである。
「ちゃんと覚えて、失礼のないようにしてくださいね」
「はい!」
「……ちなみに知っている名前はありますか?」
義理の両親は私のことを女神様が慈悲で与えてくださったと考えているが、トマシュさんは異国からフォドラの大地に迷い込んでしまった子どもとして見てくれている。家に帰れると良いですね、とひっそり心配してくれたトマシュさん。決してあの二人が悪い人だとは思わないが、心を開きやすいのは当たり前にトマシュさんの方だ。
内容は読まず、大きく見出しとして書かれている家の名前を先に確認する。
「ええっと、このフレスベルグ?はハプスブルク家に名前が似ているなぁ……くらいです。知っている名前は何も」
「そうですか。ちなみにその、ハプスブルク家というのは?」
「世界史……他国の歴史に出てくる家の名前で、あとは……顎が、長い……?」
「顎……?」
「近親婚を繰り返していたみたいで」
「いけないのですか?」
詳しいわけではないが、生まれてくる子どもが先天的な障害を持っていたり、早くに亡くなる可能性が高いはずだ。
遺伝子の問題とも伝えようとしたが、医学が一部規制されているフォドラにその概念があるのかが分からなかったため口を閉じた。
「貴方の知識は興味深いものばかりです。賢い子だったのですね」
「そんなことは!悪くはないですけど、良くもないです」
空が近い。山登りをした時のように不思議と美味しく感じる空気にはすっかりと慣れてしまい、年に数回しかしていなかった"お祈り"は毎日行うような生活を送っていた。
自宅ベッドで寝ていたはずがあれれ〜?おかしいぞ?とばかりに山の中で木に背中を預けて眠っていたらしい私は子宝に恵まれなかった老夫婦に家族として迎え入れられ、今はセイロス教の聖地であるガルグ=マクで暮らしている。
行雲流水と言ってしまうと仏教用語なのでこのフォドラの大地では冷たい目で見られてしまうような気がするが、今の私はまさにそんな状態だった。
考えようとすればいくつでも疑問は浮かんでくる。
魔法なんてファンタジーなものが存在していて──けれどこの大地も太陽は西から昇り、東へ沈んでいく。
ただの馬だけでなく、翼の生えたペガサスが飼われていて──けれどこの大地も日が沈み始めれば金星が見え、北極星だって空に浮かんでいる。
知らない文字が使われていて──なのに言語は同じで日本語が伝わる。
余計なことを考えれば沼に嵌る。だから私は考えない。現実を直視しない。
ただ雲や水が流れるように、成り行きに身を任せる。
セイロス教を信仰しているわけではない。ただ、養父がセイロス教の騎士団の一人であったこともあり、共に教会へ連れられて祈りを捧げているのだ。
初詣や七五三で貰えた千歳飴に心を奪われていた私だが、宗教を信仰するという感覚を今まで持ってはいなかった。生きている間に無意識下で神道を。お仏壇に手を合わせている時や自分が死した後は仏教に。そんなふわふわとした思いでいた私が今更一柱のみを崇めるなど出来るはずもなく。
怖いもの知らずに神様仏様、本日もよろしくお願いいたしますと心の中で唱えているのであった。
その信仰心の低さからか、白魔法と呼ばれるものが使えず、周りからは憐れまれていたりする。まあ、そもそも私が魔法を使えるはずがないのだが。教会通いで良かったことなんて、聖歌を歌わされることによって高音が出るようになったくらいのものである。
現在は私を拾ってくれた老夫婦こと義理の両親とガルグ=マクの城郭内にある街に住んでいるのだが、タダ飯食いはよろしくないと元騎士である義父の伝でガルグ=マク修道院内の書庫で働かせてもらっている。
それに伴いフォドラの文字を教えてもらい、頭文字から貸出されていた書物の片付けを行なっている。すらすらと読めるようになるにはまだまだ時間が掛かりそうだ。
書庫番のトマシュさんは私にとても良くしてくれていて、私の文字の先生はトマシュさんだ。
「せいと、のえつら、ん?あ、閲覧!閲覧を、禁ずる……え、これ私が読んでも大丈夫なやつですか?」
「#名前#さんは生徒ではないでしょう?」
「たしかに!」
大修道院には士官学校が併設されており、トマシュさんが勉強用にと選んでくれた本は貴族名鑑。つまり、一部生徒の実家の情報まで載っているのである。
「ちゃんと覚えて、失礼のないようにしてくださいね」
「はい!」
「……ちなみに知っている名前はありますか?」
義理の両親は私のことを女神様が慈悲で与えてくださったと考えているが、トマシュさんは異国からフォドラの大地に迷い込んでしまった子どもとして見てくれている。家に帰れると良いですね、とひっそり心配してくれたトマシュさん。決してあの二人が悪い人だとは思わないが、心を開きやすいのは当たり前にトマシュさんの方だ。
内容は読まず、大きく見出しとして書かれている家の名前を先に確認する。
「ええっと、このフレスベルグ?はハプスブルク家に名前が似ているなぁ……くらいです。知っている名前は何も」
「そうですか。ちなみにその、ハプスブルク家というのは?」
「世界史……他国の歴史に出てくる家の名前で、あとは……顎が、長い……?」
「顎……?」
「近親婚を繰り返していたみたいで」
「いけないのですか?」
詳しいわけではないが、生まれてくる子どもが先天的な障害を持っていたり、早くに亡くなる可能性が高いはずだ。
遺伝子の問題とも伝えようとしたが、医学が一部規制されているフォドラにその概念があるのかが分からなかったため口を閉じた。
「貴方の知識は興味深いものばかりです。賢い子だったのですね」
「そんなことは!悪くはないですけど、良くもないです」