ネタ帳

2019 / 11 / 11
無惨様に遊ばれるSS

無惨様から矢印が向いているのか向いていないのか。それか神のみぞ知る。
ツイッターで一日だけ載せていたものです。



 あまいあまい、砂糖菓子のような香り。
 わたしの思考を止めるかのように、ぽたりぽたりと滴り落ちる。
 ああ、勿体ない。

「欲しいか?」

 ねっとりと耳にこびり付くような声に脳が震えた。それと同時に体が跳ねるが、舌を噛み、痛みで堪える。
 いけない。この男は私の大切な人たちを殺した仇。そんな男のものなんて、何一つ欲しくない。欲しくない、はずなんだ。
 唇の端から零れ落ちる私の血。
 男は微笑み、その血を舐めとる。わざとらしくちゅっ、と音を立てながら。
 この場から離れたいのに離れられない。この男を突き放したいのに突き放せない。嫌いなはずなのに、触れられると気分が高揚してしまう。
 それをくつくつと笑いながら弄ぶ男の何と楽しそうなことか。
 むかつく、むかつく、むかつく。むかつくのにその笑みですら、私の心を支配する。

「いい加減に諦めたらどうだ?」

 顎を擽るように撫でられる。
 漏れそうになる声をぐっと抑えて睨み付けると、その態度は気に食わなかったらしい。
 がぶりと首筋を齧られ、そのまま食われる。
 それすらも幸福なのだと感じるのだから、もうどうしようもない。

「素直になれ」

 何が素直なのだろうか。
 無理矢理作り替えられた体が感じていることなんて、私の本当の意思じゃない。
 そうか、と素手で身体を切り落とされる。
 畳に大きな染みが出来た。
 転がされた先に天井は無く、そこには術によって別の部屋が浮かんでいるだけ。先は見えない。

「逃げ場はないぞ」

 それはそうだろう。
 出口なんて、何処にも見えない。
 脳内に響く、諦めてしまえという声。でも、嫌なの。だってこの男は私の婚約者も両親も殺した。屈したくない。
 溢れ出る涙を止める術を私は知らない。

「……可哀想に。私が宥めてあげよう」

 私の上半身を優しく抱き上げ、膝を付いた下半身の上に乗せてくっ付ける。
 男は自分の舌を軽く噛むと、私の唇を好きなように奪った。
 いやだ、いやだ。もういらないの。ほしいけどいらない。
 これいじょうのちは、もう――、