※どうせ発売しないだろ、と体験版未プレイの状態で人様の実況を観てから沼りました。
ヴィクロ発売前に書いたものです。発売後に齟齬が生じていた場合も思い出として残したいため、訂正は行いません。
ファイナルトレーラーまで見て書いています。
そこから私の考察と妄想で生み出された、中学入学前にサッカーをそれなりの熱量を持ってやっていた柳生駿河という設定が前提です。
ご了承ください。
柳生駿河先輩。長崎は南雲原町にある、南雲原中の在校生だ。
南雲原中は学業、スポーツ共に力を入れている名門校。各々の大会で好成績を残していて、その名前は有名だ。特に野球部は花形と称される程の人気で、柳生先輩はその野球部の主将。まさに雲の上の存在、なのだけれど。
「ショーの時間でーすっ!」
放課後、他の部員たちと落書きされたサッカーボールで見せ物を行う姿はどうにもいけ好かない。これさえなければ本当に良い人なのにと、盛り上がる周りの空気に馴染めない私はきっと変わっているのだろう。
「野球部やっぱかっこいい〜〜!!」
「ナマエは誰が好き?」
「あー……っと、柳生先輩かな?」
「わかる〜!」
中学に入学してから一緒に行動しているグループの女子に尋ねられ、決して嘘ではない返答をする。
あんなオーバーヘッドキック──天空サンダーと叫ぶそれは真剣に練習を重ねれば、本物の必殺技となるだろう。宝の持ち腐れだ。
宝の持ち腐れと言えば、あの不良として有名な桜咲先輩もそうだろう。将来的にサッカー部が設立されて二人が入部したら、宝の持ち腐れコンビって呼んでやる。まあ、そんな日は来ないだろうが。
「ごめん、私先帰るね。部活がんばって」
「りょ。帰宅部もがんばれ」
「うるさーい!」
今は興味のある部活がないだけで、その内内申点のために入るし!一言余計な友人たちは冗談だと笑いながら手を振る。
下駄箱で靴を履き替えて外に出た。ショーはまだ続いている。見学者たちの視界になるべく入らないようにコソコソと歩く。
横目で野球部の姿をもう一度確認し、「もったいない」と呟いたその時だ。ぽん、ぽんと軽い音を立て、ボロボロになったサッカーボールが転がってきたのは。
「悪い!こっちに返してくれ!」
片手を上げて声をかけてくる柳生先輩。このボールはショーに使われていたものだったらしい。
古くて、傷だらけで、悪口が書かれていて。でも決して、サッカーボールは汚くなんかない。
自分と柳生先輩との距離を感覚で測り、ボールを足の甲に乗せてパスを送る。柳生先輩がトラップしたのを確認し、軽く頭を下げてからその場を後にした。
ドンピシャでのパスが気持ち良くて、ニヤけてしまう頬を手で隠した。
◇
サッカーが日本で大流行するきっかけとなった25年前のFFI。今でも度々テレビで映像が使われているが、私が好きなのは鬼道有人さんや不動明王さんだ。彼らのゲームメイク能力、味方を繋ぐ力が魅力的で、憧憬の気持ちから小学生の頃はサッカークラブに所属していた。中学への進学とともにやめたことに特に理由はない。強いて言うのなら、親の転勤で南雲原のある九州地方に引っ越すことになったからだろうか。まあ、わざわざ新しいクラブに入ってまで続ける理由もなかっただけだ。
翌日。友人たちが部活動を行う中、一人寂しくまた帰路に着く。いつもと違ったのは人に声をかけられたことだ。
「あ、ナマエちゃん」
「っ!?」
野球棟に向かう途中なのだろう。制服姿の柳生先輩が私の名前を呼んだ。
どうして知っているのかと驚いていると、人当たりの良い笑みを先輩は浮かべる。
「昨日のパスが受け取りやすくて気になったんだよ。で、ちょっと調べさせてもらった」
制服が真新しいことから一年生だと当たりをつけたところ、簡単に判明したらしい。
はあ、と生返事をする。
「クラブとか入ってる?」
「中学入る前までは」
「やめたのか!?」
「え、は、はい」
勢いよく尋ねられ、たじたじになる。肯定すれば、絶句する柳生先輩だなんて珍しいものが見られた。
この人のこの態度。もしや、クラブに所属していた頃の私を知っているのだろうか。
サッカーがタブーとされている南雲原で、惜しむような声を聞くことになるとは思わなかった。
「あー……っと、私が出ていた試合を見たことがあったりしました?」
「いや……まあ……」
煮えたぎらない返事だ。身長差で元々合わない視線が更に逸らされ、顔色を窺うことが出来ない。
「なんでやめたんだ?」
「引っ越しで元のクラブから離れることになったので……。わざわざ新しいクラブに入ってまで続けようとは思わなかったんですよね」
「もったいねぇ……」
「それ柳生先輩が言います!?」
「は?」
野球部でありながらオーバーヘッドキックが出来る人材なんて、今すぐサッカーにコンバートするべきだ。
フィジカルだって優れている。生まれ持ったその体格があれば、ブロックもドリブルも力ではまず負けないだろう。特に必殺技や化身が相手となれば、それらに吹き飛ばされない肉体は誰だって求めている。欲しい人材だ。
少し練習するだけでシュート技は確実に習得出来る。きっとドリブル技もいけるだろう。
熱く語る。その熱は止まらない。
「もったいないはこっちの台詞なんです!わかりましたか!?もうサッカーやりましょう!野球も続けてもらって大丈夫なので、部活が終わったらサッカーしましょう!」
「なに言ってんだ?」
「なにって……なんでしょう?」
「急に冷静になるなよ」
ついつい頭が円堂守になってしまった。いけない、クレバーでなければ。鬼道さんや不動さんならこうはならないはずだ。
軽く頭を振り、気を取り直す。
「柳生先輩のせいでサッカーやりたくなってきました」
「それは……よかった、のか?」
「責任をとって、つきあってくださいね」
「あ?」
「部活終わりと部活が休みの日、どっちがいいですか?」
「はあ!?やるわけ、」
「どっちがいいですか?」
「おーい、もしもし?聞こえてるか?」
「部活が終わるまで待つのダルいんで、休みの日でいっか」
「イカれてんのか?」
「楽しみですね!」
にこーっと笑いかけると、額を押さえてため息を吐かれた。
何だかんだで付き合ってくれるようだ。案外面倒見が良いのかもしれない。
「そもそもどこでやるんだよ?」
「どこでも!ボール一つあれば、サッカーはできますから!」
「声がデカい」
「先輩はタッパがでかい」
「褒めてんのか?」
「褒めてます!」
「調子が狂うなァ……!」
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