※ベレト/べレス視点。先生の性別はどちらでも良いつもりで書きましたが、ベレトの方がしっくりくるかも
終始先生がメタい発言をしています
少し前まで、シルヴァンとナマエはあまり仲が良くなかった。これは二人の家庭環境が大きく影響している。貴族であり紋章を持たない兄のいるシルヴァンと、平民でありながら家族でただ一人紋章を宿して生まれてきたナマエ。ここでナマエが貴族の家に引き取られれでもすればシルヴァンの態度も軟化していたのだろうが、彼女は運良くそうはならなかった。
第一に、援助を受けずに彼女が士官学校に通っていることからも明らかであるように、ナマエの実家は裕福である。先祖が商人として成功し、今尚栄えているそうで、商家としての歴史の長さからの信頼もあり、王族相手にも商いを行ったことが多数あるそうだ。そんな事情から紋章持ちであるナマエを無理矢理にでも貴族が養子入りさせることは難しく、ならば嫁入りしてもらおうという動きがあるそうなのだが、彼女はそう簡単に流される性格ではない。
「愛らしい?本当ですか?実は新しい化粧品を我が家が仕入れまして、自分で使ってみているんです!発色が既存の物より良く、顔がパッと晴れやかになったと自分でも思っていたのでうれしいです!」
だとか、
「好みの男性ですか?うーん、やっぱり、財力のある方ですかね?なんて!あ、そちらの商品は少々お値段が張るのですが、それにはそれだけの理由がございまして……」
などと、求婚者を客どころか金蔓としてしか見ていないのである。そして乗せられて商品を買わされる男たち。憐れ。
最近ではナマエがアンナと食事をしている姿を何度も見掛けており、二人が商売敵から商売仲間になる日も近いのだろう。
そんなこんなで、紋章を持ちながらも家族や周りと上手くやっているナマエに微かな嫉妬心を持ったシルヴァン。節々に棘のある言葉にナマエの堪忍袋の緒が切れてしまったのが支援C。何をやっているんだ俺はと、反省と和解を得た支援Bではお互い気に入らないところはあるが、仲間として手を携えていこうと握手を交わした。そして支援Aは──ないのである。
青獅子の教師は激怒した。必ずシルヴァンとナマエのペアエンドを迎えてやると決意していたというのに、どこにも支援Aがないのである。元傭兵にはこの謎の支援の仕組みはわからぬ。だが、支援Aでなければペアでの後日談を知ることは叶わないのだと理解していた。
「だから、二人には支援Aになってほしい」
「何を言い出すかと思えば、またそれですか」
「意味のわからないことを言ってないで、とっとと諦めてください」
今日も今日とて食事に誘った二人に語りかけるが、ため息を吐かれるばかり。
この教師、食事では必ずシルヴァンとナマエをセットで呼び、合唱練習にも二人を誘い、厩舎の管理も任せ続けているのである。
「くっ……!シルヴァンの副官も毎回ナマエに任せているのになぜ支援が上がらないんだ……!」
「よくわかりませんけど、もしかして職権濫用ですか?」
「それに関しては理由もちゃんとあるんだ。シルヴァンとナマエの間には威力補正が入る」
「また訳のわからないことを」
やれやれと呆れたようにシルヴァンは自身の髪を撫で付け、ナマエの皿をちらっと覗くと、ついでとばかりに彼女の空の皿を手に取り、自分の分と一緒に食堂の受付へ返しに行く。
「一応ですけど、先生が私たちとは違う何かを見ているってことはこちらも理解しているつもりなんですよ?じゃないと戦場であんなに完璧な指示を飛ばせるわけがありませんし」
少しして彼女も食べ終わり、口元を拭ってから真面目な顔で話し始める。
「だからきっと、周りには隠していましたけど、私たちが仲違いしていたことをご存じなんですよね?」
「……ああ」
支援Cの話だな、と先生は頷く。確かに謎の力で彼女たちの会話を盗み聞きしていた。
「その件ならもう大丈夫です。ちゃんと対話で解決しましたし、問題ありません。不仲で失敗を犯すなんてことは万が一にもありませんから!」
「そうだけどそうじゃないんだ」
「あと私、男性の好みで言えばシルヴァンよりフェリクスくんみたいな人が理想です!」
「やめてくれ!」
そっちは支援Aが存在するんだ!敢えて支援B止まりにさせている先生の身にもなってくれ!
先生が頭を抱えていると、戻ってきたシルヴァンがその姿を見て首を傾げるが、様子が可笑しいのはいつもの事かと無視することに決めたらしい。
「ほら、やるよ。氷菓好きだったよな?」
「え!?いいの?」
「先生に絡まれてお互いお疲れさまってことで」
「やった、ありがとう!」
「そういうわけなんで、先生の分はないです」
「かわいそうに。あ、シルヴァン、ひとくち食べない?」
先生が二人の時間を多く作ったことで、お互いのことをよく理解したのだろう。シルヴァンは聞かずともナマエが食後のデザートを求めることに気が付いていたらしい。もらった側の彼女もシルヴァンが一口もらいたいことを察していたようで、スプーンをシルヴァンに手渡している。
まあ、とりあえず。
「ごちそうさま」
「……はい?」
二人の関係に手を合わせて拝む。
どうしてこれで支援Aがないのか!世の中間違っている!
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