▼ たおやかな呼吸
貴女が屈託の無い笑顔でいられる世界。
人理は未だに修復されておらず、油断ならないと言うのに。
カルデアでは多くの命が喪われたと聞いているのに。
記録の私が、彼女が親愛なる弟君と共に戦い、自分を犠牲にすることなく、二人で世界を救おうとしている姿に涙を流している。
並行世界の貴女であれば、己を顧みることなどなかったはず。弟だけを救おうとしていた貴女を知っている身であれば、これは有り得ないことなのだ。
「せ、先生呼びはお嫌でしたか!?」
「嗚呼、違う、違うのです」
ただ私は、貴女のその幸福に彩られた姿が見られたことが嬉しいのです。
貴女が声を上げて笑っている。貴女の表情がころころと変わっていく。
それが堪らなく愛おしい。
だから私が、その彩りを今度こそお守りしたい。守らせてほしい。
「是非先生とお呼びください、マスター。……このケイローン、身命を賭して共に戦い続けると誓います」
マスターはありがとう、とまた無防備な笑顔を晒した。
BACK /
TOP