痣者の増加。そして禰豆子が太陽を克服したこともあり、緊急で柱合会議が行われることとなった。
 鬼の出現率も減り、時間が出来た今。私も柱として会議に参加する。
 前日まで見回りをしていたため、会議当日の早朝。布団から起き上がることすら難しくなってしまった耀哉と話をする。
 どうしても話しておきたいことがあるのだと伝えられていたからだ。

「近く、私は死ぬ」

 はっきりと本人から告げられたそれは信じたくないものだ。けれど、見るからに弟の死期は近付いていた。そんなことないよ、だなんて嘘はつけない。そんな嘘、私も耀哉も傷付くだけだ。
 まだあまねたちにも話していない内緒の話。しかし、あまねはちゃんと気付いている。気付いていて黙っているのだ。
 耀哉のことをお願いしますと頼まれた。だからこそ、突拍子もないことをし仕出かそうとしているのだろう。
 その目は自分の死を理解した者の瞳だから。

「無惨を誘き出すよ。私の命を使って」

 嗚呼、この子は。最後まで鬼舞辻無惨に囚われている。鬼舞辻がいなければ。今まで何度そう思ったことか。
 遺体すら残す気はないのだろう。どうしてそんな悲しいことをしようとするのだと。そう言ってやりたい。けれど何を言ってもこの頑固者は意志を曲げず、ただただ謝るだけなのだろう。知っている。私は貴方のお姉ちゃんだから。
 文句をぐっと飲み込み、策を聞き出した。
 それは情報の少ない今、確実なものではなかったけれど。
 間違いなく、そうやって耀哉の命も、大切な義妹や姪っ子の命も散るのだと確信した。





「これで痣の条件は明らかとなりました。時透様はやはり、お義姉様のお弟子ですね。お義姉様も同じようなことを先日仰っていました」

 緊急の柱合会議。
 太陽を克服した鬼が現れたことにより、大規模な総力戦が予想される。そのために痣についてあまねは無一郎と蜜璃に尋ねた。
 あまねは耀哉の代理として皆の前に立ち、痣の発症に関する情報を集める。そしてその内容が自身の義姉が話していたことと殆ど同じであり、確信を持ったのだった。
 空気がざわつく。師匠。あまねの義姉。それを指すのはあの人しかいない。一部はまだ誰のことか分からず、疑問を抱いた。
 と、そこに現れたのは輝利哉だ。輝利哉があまねに声を掛けると、あまねはこくりと頷いて返事をした。

「それでは皆様。最後となりましたが、ご紹介します。この度、新たに炎柱を就任されました、産屋敷名前様です」

 呼ばれ、中へ入る。
 槇寿郎から送られた就任祝い。それは煉獄杏寿郎が纏っていたあの羽織。それを私の体に合わせて仕立て直したものだった。
 今、この瞬間、羽織っているのは名前――私だ。

「ご紹介に預かりました。本日より炎柱を就任、襲名しました産屋敷名前です。皆様知り合いではありますが、以降もよしなに」

 すっと頭を下げる。

「本日の柱合会議はこれにて。またの機会にどうぞよろしくお願いいたします」

 そう言ってあまねや姪っ子たちが私と入れ替わるように部屋を出ていく。
 私の存在に驚き、何を言えばいいのか分からないこの空気をぶった切ったのは義勇だ。

「あまね殿も退室されたので失礼する」

 今!?
 柱たちの心の声が重なった瞬間だった。
 そしてそんな義勇に対し、真っ向から正論を伝えるのが実弥だ。ただし義勇は言葉足らずなため、煽るだけ煽って結局去ろうとしてしまうのだが。
 これには小芭内も苛つき、しのぶも口を挟んだが意味は無い様子。
 何だかんだで言いたいことを言い合える仲みたいで良かったと私がのほほんとしていると、行冥と目が合う。彼は目が見えていないのだが、こくりと頷くと大きく手を叩いた。
 瞬間、ビリビリと体に響き、全員が黙り込み、座れという指示に従った。

「先ずは名前様。柱の襲名おめでとうございます」
「ありがとう。柱であるうちはみんなと立場は同じだから、敬語は必要ないよ」
「そういう訳にはいきません」

 ぴしゃりと否定され、ちょっとだけ残念である。

「一つ提案がある」

 その行冥の提案に異論はなかった。

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