壱
待機前。最後になるかもしれないということで、輝利哉たちにも挨拶をした。
「言われなくとも大丈夫だとは思うけど、三人ともしっかりね」
輝利哉、お館様としての務めをしっかり果たすんだよ。
くいな、二人が立ち止まりそうになれば、引っ叩いてでも助けてあげなさい。
かなた、何も言わなくても良いの。ただ、二人の味方で在りなさい。
短い間だけれど、ぎゅっと抱きしめた。泣きそうな三人を見なかったことにして、護衛を務める天元と槇寿郎さんに頭を下げた。
「三人をよろしくお願いします」
「おう、任せとけ!」
にかっと笑った天元の頭を撫でると、槇寿郎さんに背中を強く叩かれる。早く行けということらしい。
そろそろ日が落ちてしまう。
互いの武運を祈り、産屋敷邸の近くまで移動した。
◇
爆音が轟いた。それは大事な家族の死を意味し、鬼舞辻無惨がそこにいるのだという合図でもある。
産屋敷邸襲撃の報は既に回っているはず。後には引けない。戦うのみ。
「悲鳴嶼さん、名前さん、お願いします!!」
珠代さんの叫ぶ声が聞こえる。
爆破で皮膚が爛れ、珠代さんたちの力で体に棘が刺さった鬼舞辻の頸を行冥が落とす。
読み通りだ。頸を落としても鬼舞辻は死なない!
鬼舞辻から棘の刺さった柔軟な紐のような血鬼術が伸ばされる。それを肆ノ型で切り落とし、行冥を庇った頃には柱が集結した。
あれが鬼舞辻だと知り、全員が呼吸を使って足止めしようとしたが、無惨が不敵に微笑むと私たちのいた地面が消える。
現れたのは扉。何処か知らない場所。鬼の本拠地であろう。
一足早く落とされた私は落下地点を見ると、鬼が口を開けて待っているのが見えた。人を拘束もせずに食べられるとでも思っているのだろうか。馬鹿にされているのか?
「炎の呼吸伍ノ型、炎虎!」
なんてこと無い敵だ。サクッとやっつけて受け身をとってから立ち上がる。
次々襲いかかってくる敵を切りながらの移動。全ての鬼が下弦程度の力を持たされていた。こちらの体力の消耗を狙っているのだろうか。
とりあえず私は縦横無尽に駆け回り、至る所で鬼に対して奇襲を仕掛けよう。下弦程度の実力の鬼がいるとはいえ、しっかりと柱稽古も行った。一対多に持ち込めれば、階級の低い隊士でも問題なく勝てるはずだ。
なるべく柱の体力を温存させ、上弦の相手に回さなければ。
それに、このよく分からない場所の構造も把握出来ていない。愈史郎さんの血鬼術である札を付けた鴉が、鬼がいるせいで通せんぼされている道もあるはず。
「名前!」
「ヤシロ!」
私の相棒である白い鴉が良い時にやって来た。
これで優先度の高い場所へ案内してもらえる。
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