終幕
目覚めれば、既に太陽が昇り始めていた。
沢山の隠や隊士に囲まれている。泣いている子もいて、安心させてやりたくて微笑んだ。
音が聞こえない。でも、確かに声が聞こえたはずだ。
――炭治郎を。
そう、耀哉と杏寿郎の声が重なって聞こえた。
起き上がろうとすると、隠が背中を支えてくれる。
炭治郎はどこ。炭治郎は……見つけた。
炭治郎が、背中から管を出している?鬼になってしまったの?
義勇が、伊之助が、善逸が、やられてしまった。死んではいない。まだ炭治郎は誰も殺していない。
禰豆子が炭治郎を止めようとしがみついている。禰豆子は人に戻れたんだね、良かった。
カナヲの姿が視えた。炭治郎の体に何かを刺そうとする姿だ。それが、炭治郎を救うための唯一の方法。
こんな時に……いや、こんな時だからだろう。はっきりと未来が視えた。産屋敷の先見の明だ。
カナヲが動こうとしている。私も助けなければ。
鉛のように重かったはずの体が、羽が生えたかのように軽かった。誰かに背中を押されたかのように前方へと思い切り飛び出し、炭治郎の攻撃を食い止め、管を落とし、傷一つ付けられずにカナヲに後を託す。着地する体力も気力もなく、受け身も取れずに地面に叩き付けられる身体。
「炭治郎だめだよ、早く戻ってきて。禰豆子ちゃん泣かせたらだめだよ……」
「カナヲちゃん、名前さん……!」
視界がもうぼやけて殆ど見えない。時間の感覚も掴めず、ひゅーひゅーと音を鳴らしながら息をする。
仰向けになり、動かすことの出来ない体では何も出来ない。
太陽が眩しいな、だなんて場違いなことを思っていたら、影が差す。誰かがこちらを覗いている。
赤みがかった髪。頬に落ちる水滴。
炭治郎だ。
他にも沢山の人がいる。
「大丈夫。炭治郎は守ったんだよ。誰も殺していない」
言葉が詰まってしまっていたけれど、ちゃんと伝えられたかな。伝えられてないと嫌だなぁ。
私、頑張ったよね。私もちゃんと守れたよね。
「勿論だ!とても格好良かった!」
いつの間にか何も見えなくなり、真っ暗な世界で懐かしい声が聞こえてきた。
「名前のことを俺は誇りに思う!」
炎のような髪をしたあの人に腕を引かれて立ち上がる。
瞬きをすると、突然視界が開かれた。
透き通った川の傍に真っ赤な彼岸花が満開に咲き誇り、船が私を待っている。船には既に私の家族や仲間が何人か乗っていた。みんな、笑っている。
「迎えに来たんだ。一緒に行こう!」
「……うん!」
何故か手に持っていたお金を支払い、船に乗り込む。
そして私たちはまた微睡んだ。
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