タケミチくんがタイムリープしてる主人公で、ドラケンくんがあのノートに書いた副総長の可能性が浮上し、更に混乱してしまう。
驚いて固まる三人の間に入ったのは金髪のタケミチくんだった。
「あの!三人はお知り合いで……?」
「あ、ああ。同級生。名前は何でここに?」
「屋台の手伝いの帰りに血の跡を見つけて……。近くが騒がしかったから覗いてみたら、お腹から血を出している人がいたから」
応急処置を行ったと説明をすると、ボロボロになったタケミチくんや彼の友達を見遣ってから「危ないだろう!」と叱られてしまった。それ、さっきもドラケンくんに言われたな。
隆くんの言っていることは正しいけれど、自分が間違ったことをしたつもりもないので、ムッとした顔で不満を表す。
嫌悪な雰囲気を感じ取ったタケミチくんがまた間に入り、私たちを止めようとしてくれた。
「待ってください!その、ドラケンくんは今心肺停止の状態です。ただ、病院に着く頃には血は止まっていて!それってえっと、名前さん?のお陰なんです!」
心肺停止。ポツリと呟いた三ツ谷くんは眉間に皺を寄せ、一度ギュッと目を閉じた。頭を整理しているのだろう。
次に目を開けると、その瞳に私を映す。大きな掌を私の頭に乗せ、表情をほんの少しだけ緩ませた。
「わりぃ、焦ってた。ドラケンのことありがとな」
「ううん。放っておけなかっただけだから……。危ないことをしたって自分でも思ってるからさ、私もごめんね。心配してくれてありがとう」
「……オマエさぁ」
大きく溜息を吐かれる。色々な感情を呑み込み、とりあえず祖父母に連絡を取ることを勧められてその場を離れた。
携帯の使用が許されたエリアには珍しく黙ったままの林くんも着いてきてくれていて、電話が終わるまで待っていてくれた。
祖母は三ツ谷くんの名前を出した瞬間になら大丈夫だと安心し、手術が終わったらまた連絡をすることを約束して電話を切る。
そして明らかに様子の可笑しい林くんの背中を思いっきり叩き、俯いた顔を上げさせる。
「よく分かんないけど、今の林くんはあの……ほら……!シャバいよ!」
「あ"あ"!?」
「うん!そっちのがいい!」
青宗と一くんから送られてきた、その地域で一番の番長を目指すゲームで知った単語をけしかけてみる。流石に聞き捨てならなかったのか、林くんらしい声が出て何よりだ。
◇
日付が変わる頃になり、無事ドラケンくんの手術は成功した。
途中やって来たマイキーくんと呼ばれた彼が無理に笑っているように見えたのは、赤音姉さんが全身に火傷を負った際に大丈夫だと、自分たちにも言い聞かせるように両親が私の頬を撫でてくれたことがあったからなのだろうか。私は末っ子だから、赤音姉さんが亡くなるまでは誰も泣き顔を見せてはくれなかった。私が不安にならないよう、みんな笑って誤魔化すのだ。
「あの、名前さん?」
「はい?」
「さっきは腕を掴んじゃってごめんなさい!ウチ、エマって言います!こっちの子はヒナ。橘日向です」
「気にしないで大丈夫。乾名前です」
「三ツ谷と同級生なら中三ですよね?ウチらは中二なんで、タメでお願いします!」
「そうなの?二人もタメでいいよ」
同じ学校に通っているわけでもないので、その辺はあまり気にしないタイプだ。エマちゃんはその後遠慮なしにタメ口へ変わったが、ヒナちゃんは恐る恐るである。性格が全く違うらしい。
病院の外に出ると既に雨は止んでいて、月明かりが照らしていた。
外で待っていた東卍の隊員たちもドラケンくんの手術の成功を聞き、雄叫びを上げた後に隊長たちの命令で解散。
私も二人と別れ、祖母との約束通りに電話を入れた。見知らぬ家の子どもの話ではあるが、孫と歳が近いからと心配していたらしい。何時もより大きかった声も柔らかなものに変わった。
今から帰ると連絡をしようとすると、横からするりと携帯を奪い取られる。
「もしもし。すみません。オレ、三ツ谷隆です」
「ちょっと隆くん……!?」
左手で一本だけ立てた指を自身の口元に持っていき、静かにしろと合図を出される。夜中なので隆くんが正しい。
大人しく口を閉じると、頭を撫でられた。完全に妹扱いである。
「はい、そのドラケンがオレの友人で。名前さんはオレが責任を持って家まで送り届けます」
「待って隆くん」
「お礼なんてそんな。助かったのはこっちの方ですから。はい、ではまた後で」
はい、と携帯を返される。既に通話は切れており、腕をぐいぐい引っ張られた。
「これ以上遅くなんないように早く帰るぞ」
駐車場に停めたらしいバイクの場所までやって来ると、隆くんはひょいと先に跨った。
東卍の人たちは放っておいて良いのかと尋ねると、先に私を送っていくと伝えてあるのだとか。用意周到だ。
これは拒否権はなさそうだと諦め、私も隆くんの後ろに跨って片手はグラブバーを、もう片手は先に声をかけてから隆くんの腰を掴ませてもらう。
「……バイク乗り慣れてる?」
「兄さんがよく乗ってたから」
「へえ。歳っていくつなん?」
「一個上」
エンジンをかけて発車する。私は邪魔にならないように荷物に徹した。
私を気にかけてくれているのか、速度もあまり出さない安全運転だ。ただし無免許でノーヘルなので、警察に見付かれば一発でアウト。ご厄介になることが決定してしまう。青宗があれなので良くないことは理解しているが、私はあまり気にしない。
「バイクの二人乗りってさぁ」
「うん?」
「免許取ってから一年経たないとダメなんだよな」
初耳である。そもそもの話、青宗も無免許運転なわけだが、まさか揚げ足を取られるとは思ってもみなかった。
私は何も知らないとばかりに無視をし、赤信号で停車した瞬間に隆くんの脇腹を抓る。
愉しげに痛いと言われるが、絶対に嘘だ。大したダメージになっていない。
そもそも隆くんにとってこの話は特大ブーメランだ。無免許運転で二人乗りしているくせに何を言っているのだか。いや、後ろに乗っているのは私なのだが。
風の噂で東卍の集会場所は武蔵神社だと聞いたことがある。だからだろうか。慣れた道を進む隆くんは後ろに人を乗せているわりにリラックスしていた。
時間帯的にも道は空いていて、家の前まですぐに辿り着いた。バイクの音が聞こえて出てきた祖父母に隆くんは何も悪くないのに頭を下げ、私を巻き込んだことの謝罪をした。
「違う!違うから!どちらかと言うと私が巻き込まれに行ったの!」
「どんな形であれ、一般人を巻き込んじゃいけねぇんだよ」
そうだとしても、全面的に悪いのはドラケンくんを刺した人だ。納得がいかない私が言い返そうとしたのを宥めたのは祖父母で、祖父母は隆くんに私を家まで送ってくれたことのお礼を伝えた。そして隆くんは悪くないと私と同じことを言い、彼の頭を上げさせる。
子どもを一人で帰らせるわけにはいかないと隆くんは祖父が見送りに行き、私は家の中へ入っていく。
今日はもう遅いからと何もなかったが、翌日になりこってりと叱られ、同時に人を救けて偉かったと褒められる。今更になって身体に震えが訪れ、祖母に抱きしめられた。
そして話はそれだけでは終わらなかったのである。
息をしてみたらあなたで肺が
満たされた