やって来ました、ジョウト地方!昔ながらの建物が現存する此処エンジュシティは観光地としても有名だ。
 一年中紅葉したもみじの木が何本も埋められており、ガラルにスマホロトムが普及されてからは映えスポットとしても観光冊子で紹介されている。
 アニポケでも何度かサトシたちが訪れており、ジム戦目当てやホウオウ目当て等、滞在期間は他の街に比べて少し長めだったりする。具体的には無印181話〜183話、無印226話〜227話、新無印9話。
 ゲームでも登場していた、まいこはんのサクラにスポットが当てられており、彼女は当時のサトシの旅の仲間であるカスミと仲良しになっている。サクラの登場は無印183話、無印226話。彼女のイーブイがどの子に進化するのかを是非見守ってほしい。

「ぴちゅー!ぴちゅぴっちゅ!」
「任された!」

 スズねのこみち。
 美しい光景には悩みも吹っ飛んでしまうらしい。ピチューは落ちた紅葉を拾うと、顔の横に寄せて写真を撮ることを求めてきた。
 私は私のパートナーたちを良い画質で撮りたいという一心で一眼レフを購入済みなので、様々な角度からピチューの撮影を行う。ピチューのためなら地面に寝そべることも苦ではない。服が汚れる!とピチューは叱ってくるのだが。
 コミュ力の高いピチューは近くの観光客に声を掛け、私とのツーショットを撮って欲しいとお願いしている。男女のカップルで、手持ちはイルミーゼとバルビート。ポケモンたちもラブラブカップルのようだ。

「すみません。写真を撮ってもらってもいいでしょうか……?」
「はい、大丈夫ですよ。いいよね?」
「いいけど……!あの!もしかしてコーディネーターの!?この間、コイキングをデビューさせていましたよね!?」
「コイキングって……。前に言っていたあの人!?」

 私からも声を掛けると、どうやら彼女の方が私のファンだったらしい。彼氏もその影響で存在自体は知っていてくれたみたいで、固く握手をする。
 ぽぽぽっと頬を染めた彼女さんは可愛らしく、これは彼氏さんも惚れるわと勝手に納得してしまった。
 ピチューもピチューでウインクをしたりとファンサービスを行い、イルミーゼとバルビートを沸かせていた。「ぴちゅ?」なんて彼女さんに対して首を傾げ、頭撫でる?と尋ねている。

「頭を撫でてもいいよって言っていますけど、どうしますか?」
「え!?良いんですか!」
「私はピチューさえ良ければ。頬袋は触らないように気を付けてください」

 恐る恐る頭を撫でられ、ピチューは頭を擦り寄せる。こういうところが神対応なんだよなぁ。生まれながらにして持ったアイドル性。かわいい。これにはみんなデレデレ。
 ピチューたちの頬には電気袋があるため、かなり敏感になっている。突然触られれば反射で電撃を放ってしまう子もおり、お互いに心を許した相手でなければ触ることは難しい。だからこそ、ピチューやピカチュウ、ライチュウから頬を擦り寄せられたら、それはもう心を許してくれた証だ。私は勿論、とっくの昔に触れることを許してもらっている。何だったら私のピチューは私に頬を揉まれるのが好きで、よく膝の上に乗っかってでろんと寝っ転がり、触れアピールをしてくる。自慢かって?自慢である。

「か、かわい〜!……ってすみません!写真でしたよね!」

 カメラを渡してシャッターボタンを念の為に教え、スズのとうが写る画角で撮ってもらう。
 ギャラドスとオオスバメとも写真を撮りたいが、彼女が私のファンであると聞いてボールの中で大人しくしていた。
 後から聞いた話だが、ギャラドスは進化してから、オオスバメは私にゲットされてから一度もコンテストに出場していない。そのため今彼女達の前に姿を現してしまったら、それはネタバレのようになってしまうだろうと危惧したらしい。ファンの楽しみを奪うような真似はしたくなかったのだとか。初めて自分たちを見るのは大会中が良いだろうという、芽生えたプロ意識。カッコよすぎる。
 撮ってもらった写真を確認し、今度は二人と二匹の写真を私が撮る。スマホロトムであるため私が態々する必要はなかったのだが、なんとこの中で一番の私のファンはロトムらしい。突然の出会いに驚き、鞄のポケットから出てこなかったのだとか。
 スマホ本体に触っただけなのに、興奮したロトムはスマホから飛び出して辺りを飛び回った。サインを……!と求められたのでトレーナーの許可を得てスマホカバーにサインをすると、ロトムはスマホカバーを変えてもらうまでもうそのスマホには戻れないとモンスターボールの中へ帰って行った。
 ここまで嬉しそうな反応をされると、こちらまで気分が良くなってしまう。

「私の出身がガラルのアラベスクシティなんですけど、光るキノコとかがあって絶対にピチューくんの可愛さがマシマシになるので!機会があればぜひ来てください!」
「光るキノコ……!後で調べてみますね。それじゃあ写真、ありがとうございました」

 ピチューが肩に乗ったことを確認し、彼女たちに手を振る。そしてふと思い出し、別れる前に滞在期間を尋ねると、元々遠距離恋愛をしていて彼氏さんはエンジュで仕事をしており、たまたま彼女さんが仕事の長期出張でこちらへやって来たらしい。暫くはこのまま滞在するのだとか。
 それなら間に合うなとピチューとアイコンタクトをとる。

「今度エンジュで行われるコンテストへのエントリーを丁度終わらせて来たところなんです。ピチューは今回お休みするんですけど応援、よろしくお願いします!」

 再度手を振り、二人と別れる。
 私の言葉にロトムは前言撤回をしてスマホに入り込み、コンテストのチケットを取ったのだとか。





 やけたとう。アニポケ版ではこちらが元々オリジナルの『すずのとう』であり、ホウオウの力を求めて争った人間のせいで塔が燃え、現在の『やけたとう』になっている。
 アニメ版ではマツバがこれを三百年前の話としていたが、映画『キミに決めた!』では百五十年前の話だとして齟齬がある。世界線によって事情が異なるのか、はたまた多くの仮説があるのか。
 この世界線に於いては様々な仮説があるのだと、ゲンガーを引き連れたマツバが教えてくれた。
 すずのとうは伝説のポケモン、ホウオウとの関わりが深く、伝説や幻のポケモンが関わる歴史は有り得ないことも有り得てしまうことから、正史がどれであるのかが判断しづらい。真実の多くは闇の中である。

「とまあ、世間話はこのくらいにして。きみのギャラドスについて、きみの口から話を聞きたいな」

 エンジュジムの応接室にある柔らかなソファに座り、出されたお茶とお茶請けを楽しみながら話をする。
 千里眼を持つ修験者、マツバ。その千里眼から私が訪ねてくることを事前にキャッチし、突然でありながらもこうして対面することが出来た。
 マツバのアニメ登場回は無印181話、182話、227話。どんな内容であったかは前述しているため割愛。一言言うならば、ジム戦でのヨルノズクのみやぶる戦法は面白かった。

 マツバの服装は所謂金銀時代の物ではなく、HGSS時代のムウマージのようなマフラーを巻いた格好だ。
 ピチューがゲンガーに何かを相談している中、トレーナー同士も真剣な話し合いをする。

「ギャラドスは進化をしてから飛べるようになったわけではなくて、コイキングの頃に飛べるようになって、その後すぐに進化をしました」
「……!進化する前から?」
「はい。それからこの映像を見てもらうとすぐに分かるのですが、体全体を大きく動かしながら移動をしています。ですが鳥ポケモンたちみたいに風切羽があるわけでもなく、飛んでいるギャラドスの近くにいても大きな風が起きているわけでもないんです」

 事前にヒワマキジムでポケナビで撮影した映像を見せる。
 風切羽には飛ぶ際に空気を逃がしたり、押し返したりする力がある。鳥ポケモンたちの羽も皆これなのだが、ギャラドスには当たり前のように備わっていない。
 ではやはり浮いているのでは?との考えに至るのだが、それならギャラドスが飛んでいる際に体を大きく動かす理由が分からない。じっとした状態で飛べるかどうかも勿論試しているが、答えは否。不可能だった。

「なるほどね。うん、大体分かった。とりあえず、きみのギャラドスに会ってみたいな」
「勿論です!」

 先に話を終えていたピチューを抱き、ジムスタジアムへ移動する。ゲンガーはマツバの前方をふよふよと浮いているのだが、こちらが気になるのかチラチラ見られている。
 フィールドにはほんの数分で着き、マツバさんの合図でギャラドスをボールから出す。

「本当に飛んでいる……し、映像でも観たけど大きいね?」
「あ、そうなんです。この子身体が大きい子で」

 ついついこのサイズで見慣れてしまい忘れそうになってしまうが、私のギャラドスは通常より大分大きい。それもこの子の魅力なのだが。
 マツバが声を掛けるより早く、ゲンガーがギャラドスに話しかけた。ポケモン同士の会話は人間には多くは理解出来ない。けれど、とりあえず二匹の相性は悪くないらしい。
 ゲンガーがギャラドスの周りをウロウロし、たまに触れたかと思えばギャラドスに声をかけている。するとギャラドスは自身の体制を変え、より力を抜いて飛ぶことが出来るようになっているようだ。
 その様子を見てボールから出したままにしていたらしい、ジムのゴースやゴーストも集まってギャラドスと何かを話し始めた。
 ゴース、ゴースト、ゲンガーの三体が揃っていると無印23話が浮かぶなぁ。無印22話でヤマブキシティのジムリーダーであるナツメとの勝負に敗れ、対策を練ってシオンタウンのポケモンタワーでゴーストタイプのポケモンを捕まえに行ったのだ。そこでゴースたちに出会い、中でもゴーストはサトシについて行くことを選んだ。とは言ってもゲットされたわけではなく、あくまで同行。その後無印24話ですぐにお別れしている。それが新無印でサトシが別個体ではあるがゲンガーをゲットするのだから、運命的な物を感じる。
 無印22話に関してはアニポケ屈指のホラー回と言っても過言ではないため、夏に観ることをオススメしたい。

「凄いな」
「え?」
「いや、ゴーストタイプって悪戯好きが多くて、大事な話の最中でも巫山戯てしまうことが多いんだよ。けど、今この瞬間、彼らはギャラドスのために真剣になっている。初対面でこれは驚きだよ」

 これはもしかして、ギャラドスの人柄ならぬポケモン柄が褒められている?とピチューも顔を合わせる。
 確かにあの子はいつも一生懸命で真っ直ぐだから、見ていて応援したくなるし、何か手伝ってあげられることはないかと思わせてくれる。きっとそれが彼女の生まれ持った才能なのだろう。

「私のポケモンたち、みんな凄いんです」
「ふふ、そうみたいだね」
「そうなんです!だから私はみんなの魅力を最大限に引き出せるコーディネーターになりたいんです」

 腕から肩に飛び移り、頬を擦り寄せてくるピチュー。仲間に入れろ!とばかりにボールから出てきたオオスバメはマツバさんに挨拶した後にギャラドスたちの輪に入っていった。

「自分のポケモンたちに一生懸命になれるきみなら、きっとなれるよ」
「はい!」
「この町で開かれるコンテストにも参加するんだよね?楽しみにしているよ」
「楽しみにしていてください!」

 私たちは期待に応えられるコーディネーターなので!
TOPBACH