ナルちゃんの場合


調理室にて。バレンタイン直前になると女の子達が殺る気…んん、やる気満々でチョコを手作りし始める。アリス学園のバレンタインは普通じゃないのだ。どの女の子も平気で薬を盛る、モテる男にはマジで辛い1日なのだ。好きです…!なんて甘酸っぱい日では決してない。

「馨ちゃーん。今ソレ何入れた?」
「何って…媚薬やけど?」
「ちょっ、子供相手になんつー危ないもの入れてんの!?ってあー!柚香ちゃん直火は駄目だって!」
「え?だってこのほうが早く溶けるじゃないですか。…あー!焦げたぁぁ!!」
「言わんこっちゃない、早く火からおろして!」
「なあユキ、この10倍返しの薬も入れたらどうなると思う?」
「混ぜるな危険だと思いまーす。」
「ユキさんっ!水かけたら煙がっ!!」
「洗うのは私がやっとくから置いといてー!」
「行平にあげるヤツ耳でも生えるようにしてみよか。」
「ユッキーに何求めてんの!?」
「キャー!水入った!!」
「えええ。」

どうして溶かして固めるだけが出来ないんだ!!



────
2月14日当日ー…

「はぁ、はぁ…あれ、ユキ先輩何やってんのこんな所で。」

こんな所、とは昨日居た調理室だ。
昨日は夜遅くなりすぎて流石に見回りの教師に止められた。片付けは明日やれって。片付けを終えてから(柚香ちゃんと馨ちゃんは邪魔…んん、チョコを渡すのに頑張って貰うため居ない。)温めた牛乳にチョコを溶かして、ホットチョコを飲んでいた。其処にナルちゃんが息を切らしながら来た、というわけだ。

「燃え尽きたぜ…真っ白にな。」
「何言ってんの?」
「疲れたんだよー。チョコ作るのがこんなに大変だなんて初めてだったよー。」
「ユキ先輩って料理出来ないの?」
「私は人並みですぅー。柚香ちゃんと馨ちゃんと一緒に作ったんだよー。」
「あぁ、それは…お疲れ様。」
「ナルちゃんも飲む?ホットチョコ。」
「え。」

目を丸くして近付いてくるナルちゃん。んん?あぁそうか。

「あー、大丈夫大丈夫。変な薬は入れてないよー。」
「あ、いやそうじゃなくて…先輩は作らなかったの?」
「作る気はあったんだけどね…」
「ふーん…。じゃあコレあげる。」
「?なぁにコレ。」

手渡されたのは五本の真っ赤な薔薇の花束。

「知らないの?海外では男から花贈るんだよ。」
「え、いや知ってるけど…」
「じゃあコレ貰うね、ご馳走様!」
「あっ…」

ガラガラ…ピシャン!
私の手元からマグカップを取り上げてサッサと部屋を出て行ったナルちゃん。ふと見えた耳が赤くなっていたのが微笑ましくて、元気が出た気がする。

「…飲みかけなんだけどな。」

その調子で頑張れナルちゃん。まぁ、柚香ちゃんは売約済みなんだけどさ。






どこまでも報われないナル。勝手なイメージですけど、柚香ちゃんは料理出来なさそう。
学生時代のナル、素敵リクありがとうございました。書いてて楽しかったです。
五本の薔薇は『あなたに出会えて心から嬉しい』、一本だと『アイラヴユー』…あからさますぎるかな、と。


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