誕生日プレゼントを渡したい


「万斉」

此処は鬼兵隊の船艦である。とある天人と交渉をする為に今現在宇宙を突き進んでいた。窓の外を眺めていたのだが、そこにフラリと現れた晋助が自身の名前を呼んだ。

「…暫く江戸に行く予定は無いでござるよ。」
「あ?」

晋助の顔をちらりと見てから、再び窓の外に視線を戻して呟いた。それに片眉を上げて反応した晋助に向かって再び言葉を紡いだ。

「おや、違ったでござるか?ユキ殿が誕生日なのであろう?」
「テメェ知ってたのか。」
「うむ。しかし先方には、明朝に着くと既に連絡済みでござる。」
「…」

小さく舌打ちをした晋助に、サングラスに隠れた瞳を面白そうに細める。随分と穏やかな音楽を流すようになったものだ。勿論、時と場合によるが。
今にも部屋に戻りそうな晋助を呼び止めて、気になった事を聞いてみる事にした。

「しかし、晋助の事だからプレゼントは既に手配済みだと思っていたでござるよ。」
「あぁ、手配済みだが?」
「…」

さも当たり前だろうという顔で言われた言葉に、思わず頭が下がる。普段から様々な物をユキに宅配便で送っている晋助。オナゴが好むような物が売っていた星に立ち寄ったのは随分と前だが、その時点で既に用意していたということだろう。
しかし、既にプレゼントの手配が済んでいるならばわざわざ江戸に行く必要も無いだろう。会ったとしても、晋助が”おめでとう”などと言うとは思えない、というのが本音ではあるが。

「では何故江戸へ?」
「…アイツの事だ。貰ったケーキやら菓子やらで食事を済ますつもりに決まってるじゃぁねェか。」
「まぁ…そうかもしれぬな。」

職場から貰ってきたであろう一人分にしては大量の団子を、以前晋助が持ち帰ってきたことがあったなと思案する。

「しかし、晋助の贈り物も食べ物でござろう?消費するにはそのような日があるのも仕方のない事ではござらんか。」
「万斉、お前は俺が普段と同じような物を贈ると思うか?」
「ほぉ。」

ククッと独特の笑いを零す晋助を少し面白く思いながら眺める。そして、次の言葉に思わず動きを止めた。

「着物の一着二着増えても困らねェだろうよ。」

衣服を贈るのは独占欲の表れだと思わないでもない。
しかし、晋助の表情が、奏でる音楽が、いつになく穏やかに流れているから。こんな日が偶にはあってもいいだろうと、明朝の話し合いの為の準備をするためにこの場を後にした。