誕生日ディナーに誘いたい
「……そういえばそろそろユキの誕生日か。」
自室にて書類を黙々と片付けている最中。不意に頭を過ぎったのはユキの事。携帯を開いて日付を確認すれば、明日に迫っていた。
ユキは普段から全くと言っていいほど我が儘を言わない。俺は仕事上頻繁に休みは取れないし、攘夷志士の動向やとっつぁんの命令によっては休み返上も少なくない。それでもユキは文句一つ言わない。
偶に二人で出掛けても、アイツは俺が疲れそうな場所には行きたがらない。いつも自分を後にして、俺を優先させてくれるいい女だった。
煙草をくわえて肺を煙で満たし、ふーーっと吐き出す。
「…偶には当日にやってやりてェよな。」
クリスマスや正月、ホワイトデーなどのイベントで当日に一緒に過ごせた事なんて殆ど無い。過ごせたとしても数時間だけだったりして、食事で終わる事が多いのも事実だ。
勿論、攘夷志士の奴らはイベント事を利用して騒ぎを起こすことが多々あるので、真選組に居る以上仕方のない事だ。それを理解してくれているのだろうし、だからこそ文句も言わないのだと思う。
だけど、誕生日は他のイベントとは違う。年に一度の、その人が誕生した事を祝う為の日だ。
「つーか今から予約して間に合うか?」
電話帳を開いて馴染みの店の電話番号を検索する。発信ボタンを押せば無機質な音が発せられる。
右手は筆で書き物を再開しつつ、明日の夜の予約をとる───つもりが明日は貸し切りらしく、予約を取れなかった。
「チッ」
舌打ちをしてから電話帳から別の電話番号を引っ張り出すが、どの店も予約をする事が出来ない。貸し切りだったり改装だったり定休日だったり。
「ァァァアア!?どうなってやがるんだ!?」
ドンッと机を叩いて、煙草を灰皿に押し付ける。その際に書類が崩れ落ちるが気にならない。
「こうなったら意地でも明日の予約とってやらァ…!!」
そう言って鋭い瞳を光らせ、普段滅多に使わない名刺入れを手に携帯電話のボタンに指を押したのだった。