シカマル


「ホワイトデーに告白は”アリ”らしいわよ!」
「…はあ?」

いのに引っ張られて来た甘栗甘。そこで注文をし終えればいのがドンっと机を叩いて言った。
反応の悪い俺に若干ムッとしながらも、いのは言葉を重ねた。

「だからぁ!ホワイトデーに男の子から告白っていうのは、女の子的にアリなんだって!」
「…いやそれ、バレンタインに何にもしなかった場合だろ?」

俺、お前が気合い入れて作った花束渡してんだけど。呆れた表情で見ると、いのは今気が付いたのかポンっとわざとらしく手を叩く。

「そういえばそうだったわね。え、何シカマル。あんたちゃんと渡せたの?」
「そういえばってお前…。渡したよ。」

溜め息混じりにお茶を啜りながらそう零せば、いのは目を見開いて頬を赤らめた。あ、これめんどくせぇパターンだ。

「なんでそれを早く言わないのよー!!え、で、どうだったの!?」
「あー…クッキー貰った。」
「良かったじゃなぁい!!で?」
「で…って、それだけだけど。」

此処で誤魔化しても余計追求されるか、同期の奴らに聞き込みして広まるかのどちらかなので、めんどくせぇが此処は大人しく答えておく。
するといのは先程よりも目を見開いて、眉間に皺を寄せた。

「ハァァァア!?シカマル、あんたデートに誘うとかしてないわけー!?」
「…」
「信じらんない!!上司でもあるまいし、多少なりとも好意を持った相手じゃないと普通渡さないわよ!?」
「…」
「男は言葉が足りないっていうけど、シカマルは行動力も足りないわ。」
「…」

はじめはまくし立てるように。その勢いは徐々に失われて最後には呆れに変わり。
いのの言うように多少なりとも好意を持ってくれてはいるのだろう。だけどその不確定要素だけでは面倒くさがりで慎重な俺は動けなくて。

「そんなんじゃ他の男に靡いても盗られても仕方が無いわよ?」

この言葉で、漸く俺は重たい腰をあげた。




────

俺だってホワイトデーに何かお返ししなきゃとは思っていた。幾ら俺が恋愛事に疎いとはいえ、それくらいの一般知識や常識はある。ただそれが行動に移らなかっただけで。

「あの、ユキさん。」
「はい?」

いつものように団子を運んできてくれた彼女を見つめて言葉を探す。いや、何度かシミュレーションしたはずなのだが、彼女の前だと緊張からか言葉に詰まるから厄介だ。そうは見えないように平静を装ってはいるのだが、隠せていない気がする。

「14日のホワイトデー、何処か食事に行きませんか?」
「え?」
「その、お返しといってはなんですけと…凄く、嬉しかったんで。」
「お返しだなんて…、私こそ何かお返ししなきゃって考えてたんです。あんなに素敵な花束いただいたのは初めてで。」

花束自体は初めてじゃねぇのか?なんて深読みしてしまう俺はどれだけ嫉妬深いんだと心の中で苦笑する。そんな誰かも分からない相手に嫉妬なんかしていたらキリがねぇのに。
気持ちを切り替えて眉を下げる彼女に微笑む。

「そんじゃ、やっぱり俺と食事して貰えませんか?」
「え…でも。」
「俺にとっては、ユキさんと過ごすっつーことが既にお返しみたいなモンなんです。」

そう言うと彼女は目を瞬いた後に表情を苦笑に変えて。

「…分かりました、楽しみにしてますね。」

それだけの事なのに、俺を受け入れてくれたっつーことがただ嬉しくて。


後日食事をする際、しっかりと別のお返しを用意していた彼女。その時の俺は相当緩んだ顔をしていたと思う。


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