高杉さん
ホワイトデー間近、ということでデパートでは普段は無い店が幾つか軒を連ねていた。
そんな中訪れた時に見た様々な洋菓子や和菓子。中でも思わず二度見したのは栗の入ったパウンドケーキだった。
…6000円!?
え、マジでか。別に数本詰め合わせとかでは無い。普通に一本、中には栗がゴロゴロと入っているらしいのだが。
流石高級志向になってきてるだけあるなぁと感心しつつその場を通り過ぎた。
何故今過去を振り返ったかといえば、そのパウンドケーキが今まさに目の前にあるからで。
「これ…」
「くくっ、野暮なこと言わせるじゃあねェか。今日はホワイトデーだろォ。」
あぁ、そういえば…ってそうじゃなくて!!コレあのパウンドケーキですよね!?あの思わず二度見しちゃったパウンドケーキですよね!?
「そんな見なくても取りゃしねェ。」
「いや、あの…はい。」
そんな理由で見てたわけじゃないんだけどね。まあ、貰ったのがコレだけなら私も此処まで戸惑わないと思う。高杉さんがくれたのはパウンドケーキだけではないのだ。寧ろコッチはいつものようなお土産も兼ねているようで、包装が割と簡単だ。
ホワイトデーのお返しのメインは、春物のストールだそうだ。白地に花柄がとても綺麗な逸品で、春らしい色やデザインに思わず息を吐いた。どうやら只のストールではないんだなコレが。何処かの星で手作りで織られたらしく、とても軽く手触り抜群なのだ。
「着けてみろ。」
「え、あ、はい。」
手にとって鏡の前に行く。首にクルリと巻き付ければ、肌に触れる布地が心地良い。
私は大いに気に入ったけれど、高杉さん的にはどうなんだろうかと視線を上げればいつの間にか背後に来ていた高杉さんと目が合った。
「悪くねェな。」
するりとストールの端をすくい上げるように持ち上げ、そのまま肩越しに顔を近付けてくる。
「お前ェの肌にこの色…思った通りよく映える。」
耳元で囁かれるような声にぞくりとして背筋をのばす。それに気付いていない筈が無いのに、高杉さんは続けるのだから意地が悪い。
「もう少し暖かくなったら使え。どんな着物にも合うだろォよ。」
「…ありがとうございます。」
ククッと小さく笑う高杉さんを恨みがましく見つめれば、彼はふっと優しく微笑んだ。
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