総悟くん


今年は何をお返しにしようかとレシピ本を買い漁り、昼寝もそこそこにパラパラと眺めていた。流行ったのは少し前だが、最早定番となりつつあるアイシングのクッキーとかカラフルで可愛らしくていいんじゃないかと大体の目星をつけた頃。ふとテレビから流れてきたアナウンサーの声に視線をあげた。

『そういえば、ホワイトデーに贈る物にはそれぞれ意味があるそうですよ。』

それはデパートのホワイトデー特集の後のアナウンサー達の何気ない会話。絶賛ホワイトデーについて考え中だった俺はその話題に思わず反応した。

『へぇー、そうなんですか?』
『はい。例えばクッキーならサクッとした関係でいましょう、とかですね。』

そんなんがあるんですねィ。全然知りやせんでした。

『飴はなかなか溶けないですから末永く宜しく。最近定番になってきたマカロンは高級なものなので、アナタは特別って意味があるらしいですよ。』
『へぇー、そんな意味があるんですねぇ!では、お天気です……』

思わず感心していたのだが、もしユキさんがこのことを知っていたとすれば、俺はとんでもない失敗を起こす所だったんじゃないだろうか。…サクッとした関係なんて!



────

場所は変わり、デパートに来たはいいものの、会社帰りのサラリーマンやらで売り場は混雑していた。世の中の男のはバレンタインに縁がない奴が多いって聞いたけど、此処を見ているとそうでもなさそうに見える。まぁ、真選組はモテない男の巣窟だからそう思えるだけかもしらねぇが。

「ん?」

マカロンやらマドレーヌやらと洒落たモンを売る店が並ぶ中、その一画だけは少し違っていて足を止める。

「おー兄ちゃんどうだい?」
「随分と懐かしいですねィ。」

それは様々な形をした飴細工で、懐かしさに口元を緩める。鶏、ペンギン、イルカ、馬、兎など色とりどりの動物が並んでいた。そういえば最近は祭りでも見かけない気がするねィ。
練って丸めた飴は棒に付けられ、チョキン、チョキンとハサミで切る度に形を変えていく。見る見るうちにそれは白鳥へと形を成していった。

「凄ぇや。」
「ははっ。今では飴職人っつーのも随分と人数が少ないからねぇ。どうだい兄ちゃん
、出来るだけリクエストには応えるぜ?」
「そうですねィ…。」

テレビで見た飴の意味を思い出す。少し図々しいかもしれねぇが本心としては間違いない。遊び心も入れることで気恥ずかしさも半減するかもしれねぇなと動物を見渡した。それを迷っているととったのか、おっちゃんはニカリと笑った。

「それじゃあとっておきのコレなんてどうだい?」
「!!」

おっちゃんが取り出したのは真っ赤な薔薇で。
幾ら俺が花言葉とかに疎いといっても、流石に薔薇の意味くらいは知っている。

「そ、それは無理でさァ!」

かあっと顔が熱くなるのを感じる。慌てて否定をするが、おっちゃんはどこ吹く風で飴を新たに練り始めた。

「そうかい?じゃあこれの黄色、なんてどうだい?」
「黄色?」

着色料を取り出し飴に練り込むと、途端にそれは黄色に姿を変える。それはまるで自身の髪色のような色合いで。

「薔薇は薔薇でも色んな意味があんのさ。本数や色、組み合わせなんかでも変わるしな。」
「へぇ。」
「兄ちゃんの髪色に合わせた色もいいんじゃねぇかなーって思ってさ。蜂蜜色っつーの?飴細工だと、現実にない色でも作れちまうから面白いよなぁ。」

ニカッと笑うおっちゃんは口を達者に動かしながらも手を休める事はない。

「黄色の薔薇って、マイナスイメージの花言葉もあるから敬遠されがちなんだけどな。プラスの意味も持ってるんだぜ?」

手を止め、光に翳すようにしてクルリと一回転させる。納得がいったのか、一度頷いて掲げた。

「”あなたを恋します”」
「…!!」
「真っ赤な薔薇でストレートに伝えるより、よっぽど奥ゆかしいじゃねぇの。」

治まった熱が再び集まってきて、誤魔化すように財布に手をかけた。


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