次はどの家に行こうかな


 土方Side

今日は10月31日。
クリスマスやバレンタインなどのイベントに比べてなかなか定着しない行事。そう、ハロウィンだ。
真選組では毎年この日に何件か起こる事件に警戒をしていた。一般家庭や店に仮装して現れ、下手くそな発音で「trick or treat」と言って脅すという物だった。お菓子くれなきゃ悪戯するぞ、なんて一歩間違えれば恐喝だ。それをイベント行事と笑って流すか、そうでないかは判断し難いのだ。それががたいの良いオッサンともなると特に。

「トリック オア トリート」

目の前に現れたのは気に食わない銀髪。アホみたいな仮装をしてやがる。自然と眉間に皺が寄る。

「あん?何言ってやがんだこの天パは。」
「はぁ?ハロウィンも知らねーのかよ、おたくの副長さんは。」
「土方さんですからねィ。非常識なのは味覚だけじゃねーんでさァ。」
「あー、マヨラーだもんね。そりゃキツイわー。」
「「ぷぷっ」」
「もーやだドSコンビ。」

自然と漏れる溜め息。朝から冷やかしのような通報が何件もあり、先程電話の受話器を叩きつけてきたところだった。

「旦那ァ、その格好は何の仮装で?あ。変質者か何かですかィ?」
「何そのどや顔。違えよ、どうみてもイカしたミイラ男だろーが。」
「イカしてるかどうかは兎も角、いい歳してよくやるなとは思いますぜ?」
「とか言いつつテメーもやる気満々じゃねーか。なんの仮装だよそれ。」
「狼男でさァ。土方さんは妖怪マヨネーズですぜィ。」
「あー、なる程。」
「何がなる程ォォオオ!?」

俺は普通に隊服だ。ハロウィンだのなんだのと浮かれてる暇はねぇ。

「テメーと違って俺たち真選組は忙しいんだよ。どっか行きやがれ。」
「ならさっさと物を出しやがれ。trick or treat!」
「発音良いなおい。ったくしゃーねーな、ほれ。」
「いらねーよマヨネーズなんか。」
「なんかとはなんだ、なんかとは!!」

一々ムカつく野郎だ。舌打ちをして煙草をふかす。

「…おい総悟、どこ行く気だ。」
「やだなぁ土方さん。こんな格好して行くところなんて決まってまさァ。駄菓子屋のババァんとこでィ。」
「テメーは職務中だろーが!!あ、おい!!」

あの野郎ォォォオオっ!!!ちっ。
ワザワザ追い掛けるような事はしない。今日は只でさえ厄介事の多い日だし、あの格好を見たときから諦めていた。
万事屋からの視線を無視して巡回のため、歩き出した。後ろで万事屋が騒いでいたが聞こえないフリをした。

「え、結局お菓子くれねー訳?ケチくせーな税金泥棒は。はあ、さてと…」


次はどの家に行こうかな
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(団子屋でも行ってみるかな。)

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