仮装禁止令
猫耳+尻尾を着けたまま、バズーカによる煙が晴れるのを呆然と眺めていた。今の攻撃で桂さんは逃げたらしい。
え。どうすんのこれ。
ハロウィンに参加しないと取れないとか…え?
「…ちっ、逃げられたか。」
呆然としたままでいると、土方さんが現れた。舌打ちをして眉間に皺を寄せ、逃げて行ったであろう方向を睨んでいた。
ふいにその視線が此方を向き、目があった。目を見開き、煙草をポトリと落とした。誰が掃除すると思ってんですか。
「おま…、なんて格好してやがる。」
猫耳ですよね。ついでに尻尾も。この歳になって街中でこんな格好するとは思わなかったわ。
「最近構ってやれなかったのは悪かったが…。こんな所で誘ってくんじゃねーよ。」
「は?」
「悪ぃな、まだ仕事中だからよ。」
「え?」
なんだコレ。盛大に勘違いしてないかこの人…。あ、そうだ。
「と…、トリック オア トリート!」
「ふ、悪いが菓子は持ってねーんだ。…だからイタズラ、してみろよ。」
「は?」
「ほら、何でも良いぞ。」
「ええ。」
「おら、たまには我が儘言って良いんだぞ?」
なんだその不敵な笑いは。あ、なら。
「じゃあ、そこにあるクッキーを私に手渡して貰えませんか?」
「あぁ?…いいぜ。」
子供達用に用意したお菓子を渡して貰う。途端に尻尾がなくなり、耳が取れるようになった。
「あ?なんだ、やめちまったのか?」
「はあ。」
「似合ってたけどな。コレは没収させて貰うぜ?」
「あ、はい。」
桂さんの手掛かりだもんね。アノヤロー、捕まってしまえ。
「それから、お前はもう仮装すんじゃねーぞ?」
「あ、はい。」
大丈夫です。やりたくもありませんから。
仮装禁止令
(俺の前だけでいい…、なんてな)
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