かぼちゃの憂鬱
車で戻ってきた山崎さんは、荷物も重いしついでだからと言って送ってくれた。高杉さんのこともあるし、家知られるのは良くないかなとも思ったけれど、どうせ調べられたらすぐバレるんたからとお言葉に甘えることにした。
山崎さんがくれたカボチャは袋に沢山で、一人暮らしでは使い切れる自信がないほどの量だ。暫くはカボチャ尽くしだわ。
山崎さんにお礼を言って車を降りる。部屋までとも言ってくれたけどそれは遠慮しておいた。
扉を開けると刻み煙草の匂い。
…よかった山崎さんに此処まで来て貰わなくて。いや待て、実は山崎さん分かっててカボチャとか用意してたんじゃ…!?み、密偵怖ぇぇぇええ!!
「…ただいまです。」
「よぉ、遅かったなァ。」
すぱーっと煙管をふかす高杉さん。月明かりに照らされた彼を見て、手に持っていたカボチャをゴトリと落とした。
だって、だって…
猫耳が生えてる。尻尾も。
え?あれ、なんで!?
錯覚かと思って目を擦るが、猫耳は無くならない。
「…どうしたんですかソレ。」
「…」
「…」
「…万斉にやられた。」
「万斉さんに?」
「あぁ。」
高杉さんは静かに怒っているらしい。いや、もしかしたら既に万斉さんは斬られているかもしれない。てか絶対斬られてる。
多分お茶目でスポッと被せられたんだろう。それにしてもなんで取らないのか。
「高杉さん、取らないんですか?ソレ。」
「…取れねーんだよ、……あの野郎帰ったら殺す。」
逃げてー!万斉さん超逃げてー!!
それにしてもこの耳、私がヅラさんに付けられたのに似てる…あ。
「トリック オア トリートって言ってみて下さい。」
「あ?」
「私も今日イタズラで猫耳付けられたんですけど、それに似てるんです。『トリック オア トリート』って言ってお菓子貰わないと取れないみたいで。」
ハロウィン専用のアイテムだよなぁコレ。
お菓子は…形が悪かったから自分用にしたカボチャクッキーしかないや。…いいよね?袋に無造作に入れたソレを持ってくる。
「…」
「…」
「…トリック オア トリート」
ぽつりと呟かれた台詞。なんか可愛い。猫耳なのも恥ずかしそうなのも可愛い。
「…」
「…」
「…おい。」
「!す、すいません。はい、ハッピーハロウィン。」
クッキーを差し出すと怪訝そうだけど受け取ってくれた。すると尻尾が消え、猫耳が落ちた。あぁ…勿体無いな…。
「…助かった。」
「はい、良かったです。」
「…ところでそのカボチャはなんだ。」
「え?あ…。」
「…お前今度はカボチャだけで過ごすつもりだったのか。」
バレてる!だ、だって…!
「はぁ。」
かぼちゃの憂鬱
(殆ど没収されました)
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