※多重トリップ主注意。現代→…→排球。運動はチート。
日もすっかり暮れたとある日。一年生もすっかり馴染み、今日も坂ノ下商店に寄っていくかと話しながら帰ろうとしていた時の事だ。
「あっ吉田さんだ!吉田さーん!!」
「あ、日向くん」
突然声をあげ、一人の女子生徒に手を振った日向。全員が日向に目をやり、次いで視線の先の女子に視線を移した。
「誰?」
「さあ?」
「クラスメートなんです!ね、吉田さん!」
「え、あぁ、うん。あーと、遅くまで部活お疲れ様です」
「あはは、ありがとう。えーと、吉田さん?」
グイグイくる日向に気圧されながらも言葉を紡いだ彼女に、主将の澤村は人好きする笑みを浮かべて礼を述べる。
西谷と田中は菅原の影に体を半分隠してジロジロと様子を窺っている。まったく変なところで人見知りする奴らだ。
「吉田さん随分と遅くまで残ってるんだなー」
「え、そう?そんな事言ったら日向くんだってそうじゃないの」
「俺はバレー部だかんな!吉田さんは?」
「私は帰宅部だよ。図書館で本読んでたら遅くなっちゃって」
「へーえ!」
こんなに暗くなるまで気付かずに本読んでるなんて凄いなと感心する。だけどいくら田舎といえども、こんな暗い中女の子一人で帰るのは危険だ。
「吉田さん、家どこ?」
「え?」
「いや、暗いから送ってくよ」
「うえぇっ?だ、大丈夫です!お気遣いなく!」
「(うえぇっ?)だーめ!危ないから!」
「そうそう。それにこれだけ人数居るんだから誰かしら方向は一緒だろうしさ」
「オイ、さっさとしろ」
「影山そんな睨むなって!」
「…(睨む)?」←自覚ナシ
「あ、アッチの方…」
「随分とアバウトだな」
戸惑いを浮かべながら指を指した吉田さん。その様子を見て日向がこてんと首を傾げた。
「吉田さんって中学の頃もそう言ってなかったっけ」
「そ、そうだっけ?」
「まぁ、あの頃は引っ越したばっかだったからかもしんねえけど」
「う、うん。そうそう」
「日向、中学って…」
「あ、同じ中学なんです。ただ吉田さんは三年の中頃に転校してきたんで、それ程話した事は無かったんですけど」
へぇ、日向と同じ中学か。それじゃあ日向と同じ方向か…。あれ、そういえば。
「で、ドコ?」
「ゆ…」
「「「ゆ?」」」
「雪ヶ丘中の近く…です」
「へぇぇぇ!そうなんだ!」
雪ヶ丘中学って確か日向が通ってたっていう学校だ。日向はここ烏野に来るのに一山越えて通学してる。中学の頃は一山向こうの学校に通ってたって……あれ?
てことは単純計算でも、彼女は二山越えて通学してるってことでは…?
「「ぇぇぇぇえええ!?」」
「いや、当然電車か送り迎えだろ。自転車だと一時間以上かかるだろうし」
「そ、そうですよねスガさん!」
「そうだぞ龍!当たり前じゃねぇか!」
「ノヤも驚いてたじゃねーか!」
先程まで人見知りして黙って見てた二人までも驚いて声をあげた。それは菅原の冷静な言葉におさめられたが、コレを切欠に二人も馴れたみたいだ。
「じゃあ俺と方向同じだな!乗せてってやるよ!」
「ええっ?いや走った方が早……な、なんでもないありがとう!」
(((今走った方が早いって言った!?)))
「でも先ずは肉まんな!肉まん!」
「肉まん?肉まんて何のこと?」
日向に手を捕まれ走り出す二人。その様子を苦笑気味に眺めていれば、戸惑うような、けれど息切れなどない落ち着いた声色の少女の声。
「コラァ!待て日向ボケェッ!!」
「あっ、おい待てよ影山!!」
「スガさん先行ってるっス!!」
「元気だなーお前ら」
一斉に走り出した後輩を眺めながら、澤村は頬を掻きながらポツリと呟いた。
「うーん、あながち冗談じゃないかもしれないなぁ」
「?どうした大地」
なんでもない、と頭を振って澤村は少しだけ早足になった。
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