「おい吉田。」
「あ、跡部くんっ!?」
キャーッとクラスで悲鳴があがる。マジかよ面倒だな、と思いながらも顔を赤らめて目を潤ませる。ふ、チョロいもんだぜ。
「ど、どうしたのっ?」
「ああ、担任の伊藤先生が呼んでたぜ。部活がどうとか言ってた。」
「あ、あの、わざわざありがとぉっ!」
「あぁ、ちゃんと伝えたぜ。」
颯爽と自分の席に去っていく姿を顔を赤くしたままぼんやりと眺める。因みに、今いる場所は佳菜子の席。前の子の席を借りて座っている。
クラスの女子は口々に噂をしているみたいだが、業務連絡と分かったのか羨ましいと言っているだけのようだ。無意識に息を吐く。
「ぶっくくくく」
「ふ…、ふふ」
後ろで声を押し殺して笑っている2人に、白けた顔を向ける。途端に下を向いて声を殺して大爆笑をし始めた。佳菜子なんかは机をドンドンと叩いている。
「…おーい。」
「ぶはっ、だ、だって…」
「ふ、ふふふ、ユキちゃん可愛っ、」
「…そ、そんな事言わないでよぉっ!」
「ぶわはははははっ!!」
「───!!」
「…」
楽しそうだね。…ちっ!
「だってしょうがないじゃん。コレが普通の反応だと思っていたから、今更撤回出来ないんだもん。」
口を尖らせながら愚痴る。
「ぶ、は、だからってそのキャラはないでしょー!!」
「それって皆本さんとかの真似なんだよね?」
「うん。似てる?」
「ぶはっ!」
「う、うんっ。凄い似てるよ…っ。」
「あはっ、ありがとぉ!」
再び爆笑し始める2人。
そう。実は私、入学当初はこの2人とは別の子達と行動していた。なので周りがキャーッと言ったら一緒に叫び、顔を赤くしたら一緒に赤くする。
氷帝の女子学生を目一杯に演じてソレはソレで楽しんでいたのだ。2人と居るようになって演技を殆どしなくなった。それが気楽で、少しくすぐったい。ただ、跡部くんには既にぶりっこの印象を付けてあるし、変える必要性も感じないので、そのままの設定でいるのだ。
そして、2人はこのキャラがお気に入りらしい。
「あ。伊藤先生が呼んでるんだっけ。ちょっと行ってくるわ。」
「んー、行ってら。」
「あ、き、気を付けてねっ。」
「うん。」
立ち上がって後ろの扉に向かう。廊下に出ようとしたとき、丁度男子生徒に道を塞がれた。
「なぁ、跡部おる?」
「え、あ、あのっ席にっ…」
「あぁ、ホンマや。おおきに。」
私を通り過ぎて跡部くんの元へと向かう丸眼が…忍足くん。大爆笑している2人を感じながら職員室へと歩き出した。
後ろから感じる視線も無視をして。
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