そして再び出会う

ガヤガヤと騒がしい教室内。席に着き、頬杖をついて空をぼんやりと眺める。

「おはよー吉田さん!」
「おっす吉田!」

そこに声を掛けてきたのはこのクラスのムードメーカーの夫婦で。私はへらっと笑って挨拶を返した。

「おはよー。二人とも朝から仲良いねぇ。」
「はあ?別に仲良くなんて無えよ!」
「青子だってお断りよ!誰がこんなバ快斗なんかと!」
「んだと!?」

恒例となっている口喧嘩をスルーして、再び空へと目を移す。

この世界に来て数ヶ月が経った。飛ばされた先にはご丁寧に一軒家が用意されていて、新生活を始めるには問題無い環境だった。郵送されてきた書類や制服を見て、現状把握をするためにもと、この学校に入学した訳だが。
過ごしてきた年月のお陰で精神年齢が高いからなのか、はたまた急変した環境のせいなのか定かではないが、私はイマイチクラスに溶け込む気が起きなかった。演技を頑張ってまで此処で存在を主張する必要性を見出す事が出来なかったのだ。
そんなクラスと一線を引いている私にしつこく絡んできたのがこの二人だった。男の子の方が黒羽快斗。女の子の方が中森青子。某漫画の主人公を務め、さらには某探偵漫画にまで出てくる怪盗さんとその幼なじみだ。

「平和、だなー…」

ぽつりと零したこの言葉に二人が反応したが、私は気付かない振りをした。だって、説明しても分かるような事ではないから。ただ、鳴門の世界で過ごしてきた私には、この世界は眩しかった。



「今日うちのクラスに転校生が来るんだって!」

そう言ったのは中森さんで。ニコニコとしたその顔は自慢げで、あの二人には無かった子供らしさにクスリと笑った。

「へー。」
「しかも、二人よ!二人!」
「同じクラスに二人も来るのか?」
「そうみたい。」
「おんー…」
「残念でした!二人とも男の子ですぅー。」
「ちぇっ」

同じクラスに二人も来るなんて可笑しな話だ。クラスの人数が少ないならまだしも、他のクラスと同じ、もしくは多いくらいだ。何か裏があるのではと考えてしまう私は、随分と向こうの世界に染まっているようだ。

「え?」

あと数分で鳴るチャイム。生徒が各々席に着き始めた時、突然現れた見知った気配に思わず声が漏れた。

「?どうした吉田?」
「吉田さん?」

二人の声は何処か遠く、校舎に鳴り響くチャイムも頭に入ってこない。
だって、こんな所に居るはずが無い。湧き出る冷や汗と煩いくらい波打つ心臓。無意識に拳を握って息をととのえた。

「──というわけで、転校生を紹介する!入ってこい!」

ガラガラガラ

「初めまして!俺はうずまきナルトだってばよ!」
「あー…奈良シカマル」
「よろしくだってばよ!」

ゴンッッ

クラス内に嬌声があがる中、ユキは一人机に頭をぶつけた。
キラキラ光る金髪に人懐っこい笑みを浮かべたナルト。そんなナルトを面倒そうに眺めながらも見守っている大人の雰囲気漂うシカマル。
な、なんでこの二人がいらっしゃるんですかァァァァア!?
そろりと顔をあげればニコニコと笑みを浮かべるナルトから念話がとんできて、思わず頬が引きつる。

『よーぉユキ。久し振りだなぁ』
『は、ははは…なんで此処に?』
『あー、四代目が研究してた時空忍術を完成させたんだよ。どんな所でも俺達なら問題無いだろうってことで実験第一号ってわけだ』

そりゃ問題無いでしょうよ!暗部の総隊長と副隊長なんだから!

『ついでに勝手に俺達を救って勝手に異世界とやらに帰って行ったユキを連れ戻してやろうと思ってなぁ』

すいませんっ!で、でも勝手にトリップしてしまう体質(?)なんです!因みに此処は元の世界じゃありませんけどね。

彼等と過ごした数年は辛いことも多かったけれどとても、とても大切なモノで。
つい先ほどまで虚しく感じていたこの空間が、世界が、二人が居るだけでこんなにも鮮やかになるなんて。胸にぽっかりと空いた寂しさなんて、今はすっかりと埋まっている。

『馬鹿』
『あ?誰が馬鹿だ。』
『ナルトもシカマルもだよ!馬鹿!馬鹿馬鹿馬鹿!』

クラス内では念話なんて聞こえなくて、表仕様のナルトとシカマルが質問責めにあっている。何処か切り離された空間に居る私は、一人顔を伏せる。

『こんな所まで来ちゃって、帰るのが簡単じゃないことくらい分かってる癖に!馬鹿だ二人ともっ…馬鹿!』
『はぁ、馬鹿はあんただ。』

その面倒臭そうな、呆れた声で話すのはシカマルで。思わず顔をあげれば、頭の後ろに手を当てたシカマルと目があった。

『俺達があんたにどれだけ依存してるか知ってるクセに。あんたがどれほど俺達を大切にしてたか分かってるクセに。』
『っ』
『俺達はあんたと生きるって決めた。だから』
『俺達から逃げられるなんて思うなよ?…ユキ。』

溢れてくるモノを必死に堪えて顔を再び伏せる。私の奇妙な行動を、黒羽くん辺りは気付いているかもしれない。

『例え世界が変わっても──…』

私が違う世界から来たと話したその時に、二人が子供らしからぬ顔で宣言したその言葉。

『『お前が俺達を護ってくれてるみたいに、俺達がお前を護る』』

依存しているのは私も同じで。救うつもりが救われていたのも私で。悟られないように、精神年齢的に年上のせめてもの意地で弱音は全て飲み込んで、私は笑ったんだ。

『──…それは頼もしいな。』

子供だからと侮っていた訳では無く、自分の体質的に無理だろうと判断したあの時。けれど見事に有言実行してくれちゃった二人に、震える声であの時と同じ言葉を返した。

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