まっすぐみつめて


『明日、遊びに行かねえ?』


昨日の放課後、突然の雨で昇降口で足止めをくらっていると、隣のクラスの彼が言った。
部活をしていない私は授業が終わればすぐに帰っていたけど、昨日は委員会の用事を彼としていて終わった頃には外は薄暗くなっていた。
私は雨の降る薄暗い空を見上げながら明日の予定を思い出したけど特にやることもなかったので誘いを受けることにした。
行ってみたいお店や見たい映画の話に盛り上がっていると雨は止み、二人は帰路についた。


そんな話を亮にすると怪訝そうな顔で私を見た。

「菜々、そいつと友達なのかよ」
「いや、全く」
「よくそんな相手の誘いにのるな」
「亮だってよく遊びに誘われてるじゃん」
「俺はのらない」
「部活があるからでしょ」

私の言い返した言葉に亮はウンザリとでもいうような顔をした。
その顔を見つめていると後ろを向いていたキャップのつばを前向きにしてかぶり直す。
いつもそうだ。
肝心なことは絶対に言わない。
私がどれだけ亮の意に反することをしても止めないし、離れない。

「亮はどうして欲しい?」

質問をした私をチラリと見て立ち上がる。
それでも私は視線を外すことなく見つめた。

「菜々の好きにすればいいんじゃねぇの」

そう言うと無愛想に部活に行くと言い残して教室を出た。
たった一人になった教室はとても静かで、廊下を歩く亮の足音だけが響いていた。

「行くわけないじゃん、嘘に決まってるじゃん、バカ」

窓の外を見るとしばらくして亮の姿が見えた。
こんなにも離れていても見つけられる理由を、彼は気付いていて知らないフリをする。
それは振られるより悲しいことだとわかっていない。
目に映る景色がだんだんと滲み、私は腕に顔を伏せた。

2008/11/14

タイトル:確かに恋だった
おだやかでせつない恋だった10題 2. まっすぐみつめて

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