昼休みの屋上は私の指定席だった。
そこにいつからか転がり込んだ人なつっこい犬。人間なんだけど、犬。
そして今は隣にいるのが当たり前になっている。
昼休みが残り半分くらいになると決まってやってくる犬。
「菜々、お昼食べた?」
今日の手土産は白桃ゼリー。
チョイスが彼らしい。
何口か食べて彼に薦めてみると一瞬にしてスプーンに乗った桃は食べられた。
「実はジローが欲しかったんでしょ?」
「バレた?でも菜々が食べてくれるともっと嬉しい」
彼は屈託のない顔で笑い、私の隣に座った。
「ここで寝ていー?」
聞きながら私の肩に寄りかかった彼の意識の半分は夢の中。
モゾモゾと動くジローの髪が肌に触れ、反射的に身をよじる。
「ジローの髪、太陽みたい」
太陽に照らされて輝く髪を眺めながら呟く。
キラキラ輝く髪は彼自身を表しているみたいだった。
「菜々は月って感じ?黒似合うし、カッコイイ」
「そりゃどーも。テニスしてるジローも男前」
膝に置いた手には彼の手が絡んでいた。
柔らかな見た目とは違う、硬い男の人の手。
この手に守られるのは彼と同じように太陽のように明るい子なんだろうな、なんて思った。
急に肩が軽くなり、目の前に彼が座る。
「月が輝くのは太陽のおかげだよね?」
「そうだけど?」
「じゃセットだね、俺たち。」
そう言って私に抱きついてきた彼からは太陽の匂いがした。
月にすらなれない。
ただ燃え尽きる日を待つ名もなき星。
臆病過ぎて君に触れることすら出来ない。
一度触れてしまったら、私はいつかくる日を拒んで、みっともなく足掻いてしまう。
見上げた太陽は私の視界を奪った。
(次はオマケみたいなものです)
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