涙だけは嘘を吐かない


(boy's side)


隠して、騙して。
そして真実を見失う。

どれだけ、なんて思い出せないくらい君といた。
手を伸ばせばいつでも届くと思ってた。

「うー寒い」

急に寒くなった11月下旬。
隣を歩く菜々は首に巻いたマフラーを口元まで引き上げた。
菜々とは二年から付き合いだしてもう一年半くらいになる。
付き合うといっても、愛情なんて伴わないもの。

「ホンマ、寒がりやなぁ」
「冬はダメ。カイロ様々」

そう言ってカイロに頬を擦り寄せる姿を見ていると目線が合い、そっぽを向かれる。

「侑士、その目。バカにしてるでしょ」
「そんなことあらへんよ」

急に足を止めると、見上げてきた。

「私、こっちだから」
「寄り道するんか?寒いってゆーてるくせに」
「…あのね、侑士。今日限りにしない?この関係」

突然の申し入れに一瞬喉がつまる。
いつかこんな日が来ると知っていたのに。

「菜々がそう言うねんたら仕方ないなぁ」

菜々は小さく頷くとそのまま目線を落とした。
その姿から目を離すことは出来なかった。

「侑士のことは嫌いじゃないし、一緒にいて楽しい。でも、ごめん」

声が出にくいのは、寒い空気のせいだろうか。
吸い込んだ空気が冷たくて喉が痛む。

「まぁ、菜々がそう言うんやったらしゃーないな。用事あるんやろ?早よ行き」

再び目を合わせることなく菜々は歩き出した。
その姿は思ってたより小さく、すぐに暗闇に消えていった。
そして俺は通い慣れた道を再び歩き出した。

「…そら寒いわ」

見上げた空からは今年初めての雪が落ちてきた。
吐き出した息は、声と共に空へ吸い込まれていった。

いつでも、いつまでも、手が届くと思ってた。
見失った真実は暗い空の中。

2006/11/20(2011/2/16 加筆/タイトル変更)

タイトル:確かに恋だった

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