勢いよく伏せった頭はそのまま机に鈍い音と共にぶつかる。
「何してんねん」
「…忘れた」
「は?」
隣に座る忍足が落ちた教科書を拾いながら頭を傾ける。
「今日、当たるじゃん、私」
「たぶんな」
「だから張り切って予習してきたのよ!そしたら便覧忘れた」
それも予習した内容は全て便覧に書き込んである。
頭を抱える私を大笑いしながら、忍足はおなかを抱えた。
それを睨み付けようと顔を向けると視界が遮られた。
「使えよ」
見上げると時々忍足を訪ねてくる人が立っていた。
確かテニス部の人だ。
「あ、りがと」
突然の出来事に驚いて、声がうわずる。
トレードマークになっている帽子のつばを押さえつけながら、頷いた。
予鈴が鳴り教室へ入る人に逆らい隣の教室に向かう背中を見送る。
「あのっ!ありがとう!」
窓から廊下に乗り出し言うと、背中をみせながら手を振り隣の教室に入って行った。
「男前やなぁ」
椅子に座ると忍足が楽しそうに笑っていた。
便覧を開くと丁寧な字で色々と書き込まれていた。
「全て興味から始まるんやで。勉強も、恋も」
「何よ、それ」
「まあまあ。たまには部活見に来ぃ?」
ニヤニヤと笑う忍足に異論を唱えようとしたら先生が入ってきて、続きは次の休み時間へと持ち越されることになった。
たまには見に行こうかなんて思った私は、すでに忍足の思惑通りに進んでいるのかもしれない。
2007/7/12(2012/5/6 加筆)
タイトル:+DRAGON+BLUE+