音楽室


部長の声でコートを出て、外に用意されたドリンクを取る。
よく冷やされたドリンクが少しずつ体温を下げていく。
それでも流れる汗を拭きながらコートを眺めていると、白い花びらが舞い落ちてきた。

「なにこれー」

隣にいた芥川先輩が拾い上げたのは花びらではなく紙切れだった。
その間も落ちてくる紙の先を見ると、音楽室の窓から身を乗り出した生徒が紙を千切りながら落としている。

「日吉、これ何だと思う?」
「音符…ですか?」

芥川先輩が拾った紙には音符が書いてあった。
他のものにも同じようにある。
もう一度見上げて目をこらすと見慣れた顔だった。

「菜々…?」

同じクラスの生徒だ。
名前を口にした瞬間、目が合う。
投げ出していた腕を引っ込めると慌てたように音楽室へと消えた。

「またやっちゃったんだ」

声に振り向くと鳳が落ちた紙切れを拾っていた。
曲を作っては吹奏楽部の顧問と衝突して楽譜を破り捨てているのだ、と鳳は苦笑いした。
そしてそれは音楽性の違いだと付け足す。

「綺麗な曲なんだけどね」


そう言った時に上から聞こえてきたピアノの音に、鳳は相槌を求める。
見上げた先から聞こえた曲はどこか透明な感じで、授業中に外を見つめる菜々の後ろ姿に似ている気がした。

2007/8/29(2012/5/6 加筆)

タイトル:+DRAGON+BLUE+

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