目を閉じないで、僕を見て。


初めて触れた時の感触を忘れたことはない。
それは今でもこの身体を熱くさせる。

なめらかに滑る指はとても優しい音を奏でている。
菜々はいつも瞳を閉じて、音だけに集中する。
いや、音と彼の姿だけに。
その姿を瞬きも忘れ見入っているのを菜々は知らない。

「いつまで居るつもり?」
「飽きるまで」
「そんな暇じゃないでしょ」

無関心そうに俺を見ると菜々は再び音楽を奏で始めた。
切ないメロディーはきっとアイツを想って弾いているんだと思うと、羨ましさを越えて憎しみを感じさえする。

「菜々って目を閉じて弾くよね」
「集中したいから」

ふぅんと興味がなさそうに言いながらも菜々の一挙一動を見つめてしまう自分が悲しい。
一度でいいから俺を見て弾いてくれたら死んでもいいって思うのは、きっと馬鹿げてる。
でもそれは隠しようのない真実なんだ。

2007/9/22(2012/5/6 加筆)

タイトル:+DRAGON+BLUE+

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