僕の方が、愛してる。


部活が早めに終わった日曜。
先輩達に連れられていきつけのスポーツ用品店に行った。
馴染みの店員を見つけて話し込む先輩達を待つ間、店内をうろつく。
ふと見上げた先に知った背中があった。

「菜々…?」

親しげに話す男と、菜々。
傍から見れば明らかに…。
浮かんだ言葉を掻き消すように店を飛び出した。


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「おはよう、赤也」
「…おはよ」

俺が朝に不機嫌なのは毎日のこと。
気に留める様子もなく菜々は今日の授業の話をする。
いつもと変わらない顔で笑うのを見て、苛立つ。
騙してるくせに。嘘つき。
あんな男より俺のほうが何倍もいい男だ。
やっと俺の異変に気がついたのか、菜々が黙る。
学校に近づくにつれて増える楽しそうな声も、違う世界のことのよう。

「あの男のどこがいいんだよ」
「え?」

いつの間にか繋がれた手をぎゅっと握る。
菜々は何も言わずに、その手を握り返してきた。

「昨日、見た」

少し首を捻りながら考えると急に笑い出す。
俺が手を振りほどこうと力をこめた瞬間、菜々の手がするりと抜けた。
そしてその手は鞄の中にあった小さな袋を取り出した。

「お兄ちゃんだよ。本当は放課後渡すつもりだったんだけどね」

渡された黒い袋を開けると可愛らしいメッセージカードがあった。
菜々はクスクスと笑いながら、似てないからよく間違われるのと言った。
全身の緊張が解ける。
へたり込むように道端にしゃがむ。
脱力というより、疑ってしまった事への後悔だ。
よく考えれば菜々がそんな事するわけない。
それは俺が一番知っているはずなのに、何を先走ってるのか。

「お誕生日おめでとう」

そう言って差し出された手を取り立ち上がる。
そのまま手を繋いだまま、校内を目指す。
鬱陶しいほど騒いでる外野も今日は許しておこう。
仰いだ青空は、目が眩むほど輝いていた。

2007/10/2(2012/5/6 加筆)

タイトル:+DRAGON+BLUE+

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