雨が好きだった。
小さい頃から雨になると頭痛に悩まされていた。
それを知っている彼は夜になるとこっそり部屋にやって来て、優しく頭を撫でてくれる。
外からは雨の音しか聞こえなくて、家は静まり返っている。
まるでこの世界には二人しかいないみたいだった。
「あれ仁王先輩じゃない!?」
大好きな彼の手は隣を歩く綺麗な女の人を抱き寄せていて、その時やっと知った。
あの手は私以外にも優しいのだと。
その日も雨だった。
「今日見たよ。綺麗な人と歩いてるところ」
「そうか。まぁ菜々のほうが綺麗じゃよ」
また彼の手が私に触れる。
ゆっくり優しく私の頭を撫でる。
でもそれは家族への慈しみと同じなのだ。
私が欲しいのは、そんな優しさじゃない。
洪水のように降る雨が、本当に全てを流してしまえばいいのに。
そして私と彼の二人だけになってしまえばいい。
心が彼を欲していて、苦しくて。
私は少し泣いた。
2007/11/14(2012/5/6 加筆)
タイトル:+DRAGON+BLUE+