体に残ったけだるい熱を冷まそうと、テーブルに置いたペットボトルに手を伸ばした。
腕に当たる感触に視線を落とすとネックレスがあった。
「また、か」
女の存在を示すかのようなネックレスを手に取り力を込める。
そうさせているのが俺だとわかっている。
手から歪んだ銀色のクローバーが落ちる。
その音をかき消すように扉が開かれた。
「用事は済んだの?」
菜々は眉間に皺を寄せて俺を見た。
さっきまでここで行われていた行為ばかりか俺の存在を否定するような瞳が好きだ。
窓際に置かれたソファに寄り掛かり菜々を見据えると、視線がそれた。
菜々は机に転がったネックレスを手に取ると、ゆらゆらと揺らした。
「クローバー…」
「忘れられちゃありがたみもないな」
「私がいなくなればって願ったのかな?」
それを菜々は机の上に置いた。
その背中を引き寄せるとバランスを失った身体ごとソファへ倒れる。
口答えも動きもしない菜々を抱き締めると、何度感じても慣れない昂揚感が全身に駆け巡る。
「叶うことのない願いだ」
耳元で囁いた声に身体が小さく震えたのがわかった。
首筋に寄せた唇が熱い。
菜々が俺を見限らないのが理由のない独占欲でもかまわない。
傍にいるなら。
「好きだ」
返されることのない返事が、同じ意味を持つ言葉でありますように。
その願いは叶っているのだろうか。
確かめる方法を知らない俺は、菜々を傷つけることしか出来ない。
傍にいて欲しいと願う反面、早く逃げて欲しいと願う。
手放すことなんて出来ないくせに。
「嘘つき」
菜々が見た先には、クローバーが夕陽に照らされて光っていた。
俺は痛いほどの光に目を伏せた。
2007/11/15(2012/5/6 加筆)
拍手でリクエストを下さったササラ様へ。
タイトル:+DRAGON+BLUE+