溶け合う雪


二人で空を見上げる。
頬に落ちる雪。それはきっと今シーズン最後の雪。

「寒い思たんや」

少し身震いをさせて忍足は肩を小さくした。
私は一歩、彼に寄り頭をその肩に寄せる。
こめかみ辺りが肩の角に当たり、それは慣れのせいか頭を預けるにはちょうどいい。

「最後だよ、きっと」
「寒いのはかなわん。はよ暖かくなって欲しいわ」

とても自然に腰に回された手に少し力が入った。
春が来ることは別れを意味している。
同じ東京で違う大学に通うだけだから贅沢だと言われてしまいそう。
でも中学から6年間、一緒に一日の大半を過ごしていた私達にはその距離さえもどかしい。

「寒くていい。いいよ」

拗ねたように聞こえてしまったのか忍足は腰にあった手で頭を撫でた。
その手は思いの外冷たくて私は身をよじる。
こんな風に毎日彼の温度を感じることが出来ないのかと思うと胸が痛む。

「心配せんでええよ」

その言葉はお互いに言い聞かせているようで、とても切なく響いた。そして世界の何よりも甘く。
もう春が近いというのに私達は身を寄せ合うことしか出来ない。
言葉を積み重ねてもそれはすぐに崩れ落ちるから。
お互いの体温が一緒になって、いっそのこと溶けてしまえばいい。
そうすれば何も邪魔することは出来ないのだから。

2008/3/3(2012/5/6 加筆)
拍手お礼(2008/3/3〜5/22)

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