オレンジドロップ


部長もその彼女も、芥川先輩もあの女も。
ハッキリ言ってバカじゃないかと思う。
たかが恋愛に労力を割き過ぎだ。

「今、世の中の恋する乙女全員を敵に回したわよ」
「そんなもの敵にもならない」
「ひどっ!若はどうするのさ?」

甘ったるい匂いをさせながら菜々が聞く。
俺は迷うことなく答える。

「欲しいなら言えばいいし、奪えばいい」

そう言い終えて菜々を見ようとしたら視界を遮られ何かが触れた。
唇に。

「奪っちゃった」
「お前っ!」
「ついつい身体が」

ヘラヘラと笑いながら言う。
鞄を手に取った菜々が急に真剣な顔を見せるから、何も言えなくなる。
見たことがない顔だ。

「若が好き。だからした。謝るつもりないから」

そう言うとまさに飛び出すように教室を出た。
言い逃げをした菜々がいなくなった教室で、俺はただ呆然としていた。
唇を舐めるとオレンジの味がした。
そして奪われるより奪うほうが性に合っていると確信した。

2008/3/26(2012/5/7 加筆)
日吉がいってるのは「ブルーレイン」での出来事なのです。合わせてぜひ。

タイトル:+DRAGON+BLUE+

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