レッドムーン


「もう、大丈夫」

そう言って見せた笑顔は綺麗だったけど、切ない。

本当に偶然。
練習に疲れて休みたくて、誰にも見つかりたくなくて選んだ場所には先客がいた。
抑えきれなくて零れる嗚咽に何があったか容易に想像できた。
それほどに君を見ていたから。

「ジロー…?」

包み込むように抱きしめた体は想像より柔らかくて驚いた。
拒否されないのは今まで作り上げてきたキャラクターのおかげ。
想いを隠すのに辛いこともあったけど、役得だと思った。
冷静なつもりなのに心臓が早鐘のよう。

「遠慮せずにいっぱい泣いていいよ」

いつもより静かな声で言うと小さな手が抱きしめる腕をギュッと掴んだ。
耐え切れずに出たであろう声が耳を刺激する。
きっと君は優しいと思っているんだろうけど、俺の心は真っ黒なんだよ。
どうすればこのまま俺のものになってくれるのかと頭をフル回転させてるんだ。

見上げた月はそれを見透かしているように光っている。
そんな、気がした。

2008/5/1(2012/5/7 加筆)

タイトル:+DRAGON+BLUE+

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