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恋愛というのは、僕にはよく分からない。難しいと思うし、20になる今でも、もしかして早いかなとすら思う。
実際、みんながいう恋愛感情っていうものに行き着いたことはない。20にもなって、初恋すらまだじゃ行き遅れていると言われてもおかしくはないけれど、こういうのは急げばいいものではないってことも、色んなオトナから教わった。(カミュだってそうだったし、別にタイミングがなければそうだと思う。)

僕の周りはどちらかというと、みんな恋愛に対して、不器用なのかもね。
見ていて分かりやすいショウだって相変わらずハルカとの距離は変わらないし、そういえばマサトだってそう。あれは気付かないハルカもハルカだと思うものの、そんなハルカが想うオトヤも目立ってハルカにアプローチをかけているわけではなくって。
もしかしたら、彼等はまだよく分かっていないのかもしれない。本当に誰かを想う、ということを。(僕がハルカに向ける気持ちも、恋とは違う気がするしね。)
その点、カミュとともだちはゆっくりだったけれど、距離を縮めていった。彼女は元からとても変わっていたから、色々と普通ではなかったけど、僕に不思議な感覚を沢山教えてくれて。そんな感覚が、人を愛するということだって理解したよ。恋愛という意味だけではなくて、全てに対して。
でも、そんな2人を見ていたからかな。あんなにも誰かを想うことは、まだ僕には想像すらつかないんだ。別に、それが正しいわけでもない。僕には僕の愛し方があるだろうし、みんなにはみんなの愛し方があることは分かっている。
現に、レイジやなまえと、カミュやともだちは、同じではない。レイジが悩む理由も、なまえが悩む理由も聞いて。それらは、以前のカミュとともだちのモノとは一致しなかった。(ああ、すこしだけレイジはともだちに似てるかもね、やっぱり。)



「嫌われることを考えて動くより、好かれるためにどうしたらいいか、を考えるよ。」


仕事終わりに一緒だったレイジはいつもより弱気に見えた。というよりも、未来じゃなく、今に必死な気がしたんだ。
レイジにしては、珍しいでしょ。いつも先をちゃんと見てるのに恋愛だと違うんだ、って思わず僕は口にしてしまったけれど、それは彼にとってプラスだったらしい。
吹っ切れた彼が口にした言葉は、ああ、やっぱりレイジだなって思わせるようだった。(勿論、たまに後ろを向くのは必要だと思うけれど、レイジが僕に見せることはほとんどないから。)
僕には恋愛のイロハが分かるわけではない。それでも、そうやって悩んで進んでいく姿は、自分のフィールドとはまた別のものを感じる。
あれだけ僕達が頭を悩ませたともだちとカミュが上手くいって、レイジが上手くいかない理由がないと思うんだけどね。レイジは2人に比べたら器用だし。ああ、しいていうなら、彼が想う女性のほうが、不器用かな。カミュとはまた違った不器用さだった。だから、ある意味レイジじゃムズカシイかもしれないし、レイジだからいいのかもしれない。どちらかというと、僕は後者だって信じたい。



「誰かさんが言ってたんだけどね、」


それに続けるのは、彼女が想う彼が口にした言葉だった。僕の言葉じゃないよ、キミの想い人の言葉だってのは、伏せておこうか。きっと、素直になんて、なれないから。
彼女の瞳が、ゆっくりまぶたを下ろす。図星だったかな、なんて。

嫌われたくないというのは、人間の当然の欲だし、それが悪いとは思わない。だけど、それにばっかりとらわれて動けなくなるってのは、すごく勿体ないよね。
だって、キミは、ヒトから好かれているんだもの。僕だって、カミュだって、リンゴだって、ともだちという存在を通じて知り合ったに過ぎないかもしれないけれど、キミが悩むなら、背中を押してあげたいって思う。
嫌だって言うのを無理矢理どうにかしようなんて、考えてはいない。でも、前に進む意思があるのであれば、みんな、手を離さないと思うよ。そして、誰より、レイジがね。
素直になるのが難しくっても、大丈夫。レイジはちゃーんと分かってくれる。やっぱりキミには、レイジがいいんだと思う。キミがどう思ってるかは分からないけど、僕はそう思うし、キミの周りもそうなんじゃないかな。




(ああやって悩むものなんだ。)(そりゃあそうよ!)(ともだちですら、そうだったもんね。)(でしょ?でもまあ、わたしもいろんな人に救われたけど。)(僕は、キミがカミュの隣に立てないとは思ったことはないよ。)(あら、ほんとに?)(結局、自分自身がどう思うかだし。キミが望むのなら、隣に立てるでしょ?)(望まなかったら、こうはなってなかったって思うわ。)(なまえも望んじゃえばいいのに。)(いやね、美風。)(なに?)(なまえさんはそういうとこが、可愛いんじゃない?)(そういうもの?)(そういうもの。寿だって、そんなの分かって好きなんだから。)(レイジって変わってるよね。)(好みの問題じゃない?)(そういわれたらカミュの好みは一生理解できない。)(失礼ね?!)(冗談だよ。)(まったく!いつもそれなんだから!)(お姉さんだから、許してくれるんでしょう?)(はいはい、可愛い弟分だからね?)
Love makes me Beautiful.
(もっともっと、綺麗になると思う。それは、恋の魔法ってやつかも。)








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