00
今年でホグワーツ生活も3年目。
マグル生まれのわたしも、だいぶん魔法界に慣れてきた。
ロンドンのキングズ・クロス駅で9と4分の3番線が分からないと右往左往することもないし、出発した列車に友人と乗り込み、やってきた車内販売のおばさんに、チョコをひとつちょうだい。と頼むことも簡単だ。
最初はあれだけ拒んだカエルチョコすら平然と食べられるようになって、車内から見える何もない田園風景に懐かしさすら覚える。早く帰りたいと願っていた分、新学期への気持ちは高鳴るばかり。
この二か月、どれだけホグワーツが恋しかったことかしら、とーってもよ!
いつも通りどこかへ行方をくらませたウィーズリーの双子たちは帰ってくる気配がなく、6人乗りのコンパーメントに残ったのは、わたしナマエ・シンディと、同じくグリフィンドール寮のレイジ・コトブキ、そして、ランマル・クロサキの3人だった。
レイジは、パパがマグル、ママが魔女という家系で育ったハーフ。
他人とはたまに思えなくなるのは、自分とよく似たテンションに空気感で、その上、性格もそうだからかもしれない。寮関係なしに分け隔てなく人付き合いをし、いじられることも多い彼。初めて出会ったのは、9と4分の3番線を探していた時だったけれど、偶然にも同じ寮で、今では一番と言っていいほどに、距離の近い存在だ。
おしゃべりなところもわたしと同じで、3人になったコンパーメントで話すのも、わたしと彼ばかり。
一方のランマルは、古くから続く純血一族の長男。
純血主義のお家柄に生まれたらしいけれど、そんなのはダサいと言って、マグル生まれのわたしともほかの人と同じように接してくる。
クールなそぶりを見せて、案外内面は熱い男。最初はとっつきにくかったところもあるし、一人を選ぶような彼だったけれど、今ではすっかりグリフィンドール寮きっての悪ガキの一員。(ちなみにメンバーは、フレッド、ジョージ、レイジ、ランマルね、わたしは入ってるわけないでしょう。こう見えても品行方正なの!)
今だってレイジが話を振ったのに、素っ気ない素振りを見せたけど、仲がいいからこそ、だ。
「ねえ、去年のホグワーツ特急のこと、覚えてる?」
「去年?なんかあったか?」
目の前に座るランマルは、窓の外へ向けていた視線をこちらへ向ける。それは、彼らしいと言えば彼らしい答えだった。
むしろ、この質問の方が、わたしらしくなかったかもしれないわね。過去にこだわらないと人に言い張って、記憶力がないことを誤魔化しているくせに、突然過去を出してくるなんて。
でも、そんなわたしにとっても、1年前のあの日は衝撃だった。下手すると、ホグワーツに入るよりも信じられないくらいの出来事よ。
「やだなあ、ランラン。」
隣にいる顔を見なくてもわかるほど、レイジの声色はにやついている。こんなこと言いだすんだ、分かるでしょ。と、ひじ掛けに両手をかけてふんぞり返った彼に続いて、ランマルもおんなじ顔をし始めた。
「アア、そういうことな。」
まったく、いたずらっ子ってこういうことを言うんだわ。いじわるね、アナタたち。
ーそう、1年前のこの日。
わたしは、とある人に”恋”をした。




back/top