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マグルも魔法使いも、夏休みの使い方はあまり変わらない。みんなどこかしら、バケーションの旅行に出かけるの。
我が家の今年の旅行は、南フランスのビーチへ。とは言っても、パパの知り合いと一緒で、とても肩の力が抜けるものではなかったことは、付け足しておくわ。所謂大人のお付き合い、ってやつよ。

魔法使いの間に、"純血"のコミュニティがあるのと同じように、マグルの間では、それが"収入"という一つのランクで決まってくる。(勿論、階級社会のイギリスにおいて、血統の根深さは、強く残っているけれど、今はそれ以上に、収入レベルがランクを作っているかもしれない。)
収入でお付き合いする人の層は変わるし、そのランク毎で考え方の部分もずいぶん違っていた。純血には純血の考え方があるのは、マグルの世界でも、理解できる部分がある。
相容れないマグルと魔法使いの世界。でも、案外共通しているものも多いことに気付きだしたのは、少しは年齢を重ねて、わたしに見えるものが増えたからかしら。

旅行先でフクロウを送るのはやめてちょうだい!と、ママにはヒステリーを起こされたので、わたしはきっかり2週間、誰とも連絡を取ることができなかった。
帰ってきたその日を見計らうかのよう、リンゴからフクロウ便が届き、それを見てわたしは、ようやくあの日が近いことに心臓をドキドキさせる。待ち合わせ時間と場所が明記された綺麗な文字。そこには釘をさすように、身だしなみのことまで。彼らしい、と言えば、彼らしい。


「ねえ、明日の格好、どう思う?」
「だっさ。」

マグルの妹に聞くのは間違い?でも、彼女はファッションセンスが凄く良いんだもの。他に聞く宛はリンゴくらいなわたしにとって、明日を目の前にして頼りになるのは、妹だけ。
魔女の格好って信じられないくらいダサい。そうすっぱり口にするほど、マグルの世界じゃファッショナブルな彼女。先日、パリで新しく買ったワンピースを勧められたけれど、スラグホーンは気に入ってくれるかしら。

「ナマエは相手の好みに合わせて服装を変えたいの?」
「どちらかと言えば、彼の隣に立っていて見合うようになりたいわ。」
「アナタの好きな彼が、まるで王子様くらいの言い方。」

そんなにすごい人なわけ?と鏡越しの彼女は、ニヤニヤ笑う。わたしにとってはね。そう返せば、いくつか広げられた服の中から、改めて違うワンピースを手に取った。

「どんな男か知らないけど、これが似合ってるわ。」

彼女が選んだのは、わたしのお気に入り。


当日、リンゴとの待ち合わせは、彼等との待ち合わせの30分前。その10分前に到着したわたしはというと、心臓を落ち着かせようと必死だった。楽しみで早く到着したってことは、スラグホーン達には内緒ね。
わたしとの待ち合わせぴったりにやってきたリンゴは、いつも通り、女の子みたいな格好をして、わたしよりも女性らしい。もちろん、彼が男の子の格好をしてくるとは思ってはいなかったけれど。
ちょっとは空気を読んでほしかったわ、と言ってみれば、お前はそれでいいだろ、と返される。役割分担ってのがあるから、無理に自分が可愛らしい方向にいこうと思わないものの、それでも、ちょっと女として負けた気分にならない?

「そりゃ負けてるしな。」
「すーぐそういうこと言う!」
「俺はお前よりも、磨き方を知っているし、実践もしてる。当然、お前に負けるわけないだろ?」

彼には彼の道があって、彼の望むものがあって。女として生きるつもりはない、けれど、その見た目に手を抜くことはない。だからこそ、女のわたしより、圧倒的に魅せ方を分かっていた。
努力をしていないわけじゃない。誰よりも努力をして手に入れた成果だ。もし、彼のようになりたいのなら、同じくらい努力すればいいってのを、リンゴは教えてくれた。
同じ年なのにね。まるで、メンターみたいな存在なの。あまっちょろくないリンゴが好きよ。ぬるま湯につからせてくれない、彼はわたしにもっぱら厳しかった。出逢って心を開いてからは、ずーっとこの調子。でも、それがわたしにはよかったんだわ。

「じゃなきゃ、ナマエにこんなチャンスはめぐってこなかったかもな?」

アナタの厳しさが優しさの裏返しだってことを知っている。優しさは、甘いのとは違うの。優しさと強さは、イコールであるべきだって思うし、わたしはそんな女性になりたい。

「ナマエがなりたい女になるのは、手伝ってあげるよ。」
「お願いします、サー。」

わたしがなりたい女性になったとき、恋した彼が隣にいたら。そんなことを、考えさせてほしい。それだけで、もっと頑張れる気がするの。




(マグルもバケーションには旅行に行くのか?)(そうよ。スラグホーンはどこに行ったの?)(ストックホルムへ2週間ほど。)(スウェーデンね、素敵なところだった?)(悪くはない。)(今までじゃどこがお気に入り?)(オーストリアは過ごしやすかったな。)(ウィーン?)(ああ。)(アナタ達はどうやって旅行に行くの?煙突飛行?)(そうだな。マグルはどうやって?)(わたし達は飛行機って乗り物を使うわ。)(聞いたことがあるが、マグルの乗り物は不便では?)(仕方ないわ。マグルに不便はつきものなの、学校を離れたわたし達が不便なようにね?)(それもそうだな。)(...なぜ私まで呼ばれたんです?)(不自然じゃないでしょ?それに、ナマエが誘えないんですもの。)(あれだけ好意があるのがバレバレで誘えないというのも変わっていますね。)(カミュちゃんは気付いてないでしょ。)(ええ、まったく。彼女を不憫に思うほどには。)(いいのよ、気付いてくには時間が必要なんだから。2人ともにね。)







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