02



2年目の組み分けが始まった。

自分がどこに組み分けされるかとドキドキした1年目とは違う。本来だったら楽しみながら見ていられるはずが、去年よりも緊張しているわたしがいた。
マクゴナガル先生に連れられた新入生の中から、彼を探そうとじっと見つめる。彼の存在に目を輝かせたわたしを見て、隣のレイジがにやついた。んもう、何も言ってないのに!

「ふーん?」
「だから、違うってば!」

テーブルの隅っこでひそひそとしたやり取りをする中、あ、あの子だ。と指まで差し出す始末。向こうが気づいたらどうしてくれるのよ!心臓に悪いんだから!
ちょっと気になったくらいで、恋なんて言うのはバカげてると思わない?気になる、と、恋じゃ全く違うわ。相手を全く知らないのに、恋だとか一目ぼれだとか、そんなのちょっとおかしなはなしよ。少なくとも、わたしにとっての恋は、もっと知ってからじゃないといけないものだった。


『―スリザリン!』

組み分けの順番が最後だった彼に、帽子が高らかに叫んだのは、自分とは違う寮の名前。
彼の代わりにグリフィンドールの席から、何度も念じた願いは届かず、彼はスリザリンのテーブルへ迎えられていく。ごつん、と音を立てて自分の頭を机にぶつけたわたしに、レイジと反対隣に座っていたランマルが、何だよ。と眉を顰めた。
ぐすん。わたしはいま、アナタにやさしく返答できるほど、心に余裕はないんだから。
ドンマイ、と笑うレイジの言葉が憎たらしい。

「一目ぼれした男が、スリザリンなんだ、勘弁してあげて。」
「は?」
「ちょっと、余計な事言わないでよ!」

わたしとレイジの顔を言ったりきたりするランマルは、あからさまに怪訝な顔をした。違うと否定すればするほど、本当みたいだし、とは言え、否定しないのもおかしいし、なんだか悔しい。
ランマルはランマルで、わたしと恋愛がいくら結びつかないとはいえ、誰が誰にだ?と真顔でレイジに尋ねるのだから、素直にもほどがある。こっちは、ちょっと気になった子がスリザリンで落ち込みそうな気分だっていうのに!
寮で人間関係を決めようとは思わないし、スリザリンにも友達はいるし、スリザリンが嫌いなわけじゃないけど...ちょっと遠いわよ、ちょっとね!

「で、気になったってのはどいつだよ。」
「えっと、さっきスリザリンに入った、スラグホーンって子。」

一目ぼれじゃないもん、と拗ねた子供のような態度を取るわたしにしびれをきらしたランマルは、わざわざ言い方を変える戦法に出てきた。レイジと違っていじわるを引きずらないところは、男気の強い彼らしいといえる。
だからこそ、ある意味レイジよりは素直に、その名前を口に出せたのかもしれない。

「カミュ・スラグホーンか?」
「あれ、ランラン知り合い...ってあれ、スラグホーンってまさか!」
「何言ってんだ、聖28にも入ってるだろ、スラグホーン家は。」

彼の言う”聖28の一族”は、流石のわたしでも、存在を知っていた。間違いなく純血の血筋と認定された一族の総称だ。
残念ながら記憶力の乏しいわたしに、28すべてを言わせるのは難関だけれど、その中には、双子のウィーズリー一族や、わたしに目を付けているスリザリンで純血主義のフリット一族が名を連ねていることは、把握している。
純血主義が多い中でウィーズリー家は、確かに異端な存在だったけど、全てがそうじゃないはず。彼が純血主義だってあきらめるには、まだ早いわよね、そうよね。

「でも、聖28だからって純血主義って決まったわけじゃないでしょう?」
「何の話だい?」

校長先生の話が終わり、宴が始まったところに現れたフレッドとジョージはタイミングが悪いと言わざるを得なかった。わたしにとっては、だけど。拡声器のようなこの2人だけは、正直、何も聞かれたくなかった。
わたしが、なんでもないって答える前に言葉を発したのは、ランマルで。

「コイツの一目ぼれした男が聖28でスリザリン。」
「ワーオ...、ドンマイ。」

おんなじ顔がおんなじ表情で、おんなじセリフをかけてくる。んもう、違うんだってば、一目ぼれじゃなくって!なんてわたしの言うことを聞いてくれるはずがない。やっとナマエにも春が来たと思ったのにな。とオーバージェスチャーがわざとらしかった。

「でも、クソフリントみたいな純血主義だって決まったわけじゃ....」
「隣に座ってんのそのクソフリントだよ?」

やけになったわたしに、レイジがとどめのひとことが突き刺さる。やだもう!なんてこと!
スリザリンの席では、さっきまでわたしが必死に探した彼が、フリントの隣で食事を始めていた。あれがせめて、フリント以外だったらよかったのに。マグルのわたしにとって、過激な純血主義は相いれない存在だった。

「んもう、さすがに!凹む!」
「大丈夫だって、ナマエ!」
「純血主義なんて、くそくらえだぜ!」
「そうそう、最悪、チャーリーがお前のこと貰ってくれるって!」
「ちょっと、何でもチャーリーになすりつけないで、そこは俺がとか言ってよ!」
「冗談でもキツイから、遠慮するよ!」
「失礼だわ!」

初日からグリフィンドールのテーブルでチキンが舞ったのは、許してちょうだいね、新入生諸君。



(ねえナマエ、わたし達にもその話詳しく教えて。)(ちょっとアンジェリーナ、どこからそんな話を!)(向こうで、リーが大きな声でしゃべってたわよ。)(あのクソタランチュラ野郎!)(いいから、座って。)(あの、アリシア?)(アナタの恋の話題なんて滅多にないんだから、喋ってもらわなきゃ。)(いや、恋じゃなくて、)(一目ぼれでしょ?)(立派な恋よ!)(でも、スリザリンの男に恋するなんて中々スリリングね?)(しかも聖28でしょう、マグル出身なのにハードル高いトコロ行くわ!)(アーちょっと、見世物じゃないのよ!野次馬は帰って頂戴!特に男子!)(いや、男子も何も言いふらしてるのが男子じゃないの...!)(僕もそれはつっこみたいところ。女のコのパワーってすごいね!)(余所でやれよ。)(ナマエは人気者だなあ。)(ちょっと!そこのクソ双子?!)(レイジ、ランマル、フレッドにジョージ!アナタ達はちょっとあっちに行ってて!)(僕等はお呼びじゃないらしい。)(いや、助けてよ!)







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